11月20日(金)「愉快なゆかいな殺し屋稼業」

「愉快なゆかいな殺し屋稼業」('85・米)監督:アンソニ−・ハ−ベイ 製作・脚本:マ−ティン・セヴィバック 音楽:ジョン・アデイソン 出演:キャサリ−ン・ヘップバ−ン/ニック・ノルティ/エリザベス・ウイルソン/チップ・ジェン/キット・ル・フィ−ヴァ−
★独り暮らしのマダム・クイグリ−と殺し屋シ−モアとの出会いは殺人事件。コンビを組んで始めた仕事は死にたくて死ねずにいる老人相手の殺し屋稼業!? 戦慄どころか依頼殺到の反響ぶり、けれども二人の間には・・・。
説明抜きの大女優キャサリ−ン・ヘップバ−ンと個性派アクションスタ−、ニック・ノルティの絶妙な演技が冴える都会派アクション・コメディ。手ごたえ充分の快作です。(VHSの解説)

◎強面の殺し屋シ−モア(ニック・ノルティ)が罪悪感に悩んで、商売道具の右腕の不調や鼻血の頻出に襲われ、怪しげな髭面の精神科医に1時間75ドルも払って治療を受けているという設定が笑わせる。そのシ−モアの殺しの場面を偶然目撃した老嬢クイグリ−(キャサリ−ン・ヘップバ−ン)が、シ−モアに自分を殺してくれるように依頼に現れるところから奇妙に倒錯した物語が始まる。ミズ・クイグリ−は1000ドルの依頼料を工面するために、死にたくとも死ねないという同じ悩みを持つ男性をこの奇妙な企てに誘い込む。この男性がひょんなことから頓死し、ミズ・クイグリ−はそれをシ−モアの手際と思い込み吹聴して廻ったために、5人の友人が志願者として名乗りを上げる。都合で一人抜けた4人を歌を唄っている最中に痛みも苦しみもなくあの世に送ったシ−モアは、この殺しについては罪悪感が起こらなかったことで、長年の職業上の悩みから脱却することが出来て歓喜し、クイグリ−を“ママ”と呼び始める。その“ママ”ことミズ・クイグリ−はシ−モアを老人ホ−ムに案内し、ベッド上で植物人間化したニンゲンたちを見せ、この世の中にはいかに多くの老人たちが死にたくとも死ねずにいることを知らしめ、シ−モアにかつて持ったことのない使命感と生き甲斐を与えるのだった・・・。これから再逆転が始まるのだが、それは見てのお楽しみ。ラストのオチも悪くはない。なによりもこのブラックな設定が今となってみればより切実なモノとなっていることの皮肉を思う。呑気呆亭