12月9日(水)「無能の人」

無能の人」('90・松竹富士)監督・主演:竹中直人 原作:つげ義春 脚本:丸内敏治 撮影:佐々木原保志 音楽:GONTITI 出演:風吹ジュン/三東康太郎/マルセ・太郎/山口美也子/神戸浩/神代辰巳/いとうせいこう/大杉漣
★異色の漫画家・つげ義春の同名漫画を個性派俳優の竹中直人が初演出で映像化した作品。多摩川の河原で石を売る男とその家族を中心に、現代社会から落ちこぼれた人々をブラックなユーモアを交えて温かな視点で描く。竹中自身が惚れ込んだという独特のつげワールドを初演出ながら見事に再現してみせた。多摩川で拾った石を売る助川助三。かつては漫画家だった彼も、いつしか時代に取り残され、数々の商売にも失敗、思いついたのは元手のかからない石を売るというものだったが…。<allcinema>

12月4日(金)「ビバリ−ヒルズ・バム」

「ビバリ−ヒルズ・バム」('85・米)製作・監督・脚本:ポ−ル・マザ−スキ− 原作:ルネ・フォ-ショワ 脚本:レオン・カペタノス 撮影:ドナルド・アクアルパイス 音楽:アンディ・サマ-ズ 出演:ニック・ノルティ/リチャ-ド・ドレイファス/ベッド・ミドラ−
ビバリーヒルズの金持ち一家に入り込んだ浮浪者が、持ち前の教養と性格で次第に皆を感化し始める。ジャン・ルノワールの名作「素晴らしき放浪者」(32)を、舞台をハリウッドに移してリメイク。P・マザースキーが上流階級の馬鹿馬鹿しさを笑い飛ばしている。浮浪者に扮するN・ノルティの豪快なキャラクターと、彼に振り回されるR・ドレイファスの対比が面白い。<allcinema>

◎ボロボロ・でぶでぶで、もうこれ以上堕ちようがないと開き直った浮浪者が、相棒のワン公にも遂に愛想を尽かされてペットロスに陥るという冒頭の設定が面白い。絶望した浮浪者が成金のドレイファスの邸宅に紛れ込んで、プ−ルで自殺を図ることから物語が動き始める。迷惑を受けた側のドレイファスだが、虚栄心に裏打ちされた博愛精神から浮浪者を世話することになるのだが、最初は浮浪者を毛嫌いしていた家族たちが次々に彼に影響されるに及んで、主役の座を奪われる恐れに本来の素朴な差別感を露わにし始める。そのあたりのドレイファスの演技が見もので、浮浪者ノルティのふてぶてしい演技との対比が素直に笑わせてくれる。呑気呆亭

12月3日(木)「汚れた血」

汚れた血」('86・仏)監督・脚本:レオス・カラックス 撮影:ジャン・イヴ・エスコフィエ 音楽:ベンジャミン・ブリテン/セルゲイ・プロコフィエフ/シャルル・アズナブ-ル/デヴィッド・ボウイ/セルジュ・レジアニ 出演:ジュリエット・ビノシュ/ドニ・ラバン/ミシェル・ピコリ/セルジュ・レジアニ
ハレー彗星が再び近づく近未来を舞台に、才人カラックスが独創的な映像世界を展開するSF的なフィルム・ノワールにメロドラマの要素が溶け込んだ作品で、熱狂的に世界の若い観客に迎えられた。愛なきセックスによって伝染する“STBO”という奇病が蔓延するパリで、ジャンという男がメトロで死ぬ。友人マルクは彼が金貸しのアメリカ女に殺されたのではと疑いを持つが、彼女から汚れた金を借りていたのはマルクも同じだった。その返済のため、ある製薬会社が開発した“STBO”の特効薬を盗み出そうと誘われたジャンの息子アレックスは、マルクがつれ添うアンナに密かに心魅かれしぶしぶ承諾。計画は実行されるが、そこにアメリカ女の目は光っていた…。マルクにM・ピコリ、アレックスにD・ラヴァン、アンナにJ・ビノシュ。エスコフィエの、特に夜間撮影が素晴らしい。ビノシェが風のように走り、まさに風になってしまうラスト・ショットが鮮烈だった。
<allcinema>

◎前作の「ボ−イ・ミ−ツ・ガ−ル」を再見してラストまで見終えることが出来なかったので、これはどうかなと変な期待を持ちながら見始めたのだが、これは中々面白かった。筋立てはあまり練られたモノとは思えなかったが、随所に挿入される斬新な映像が映画を見るということの面白さを与えてくれたし、それよりも何よりもジュリエット・ビノシュの天与の美貌がこの作品の魅力のすべてだと言っていい。おかげでドニ・ラバンも光っていた。呑気呆亭

12月2日(水)「薔薇の名前」

薔薇の名前」('86・仏)監督:ジャン・ジャック・アノ− 原作:ウンベルト・エ−コ 脚本:ジェラ−ル・ブラッシュ/ハワ−ド・フランクリン/アンドリュ−・バ−キン/アラン・ゴダ−ル 撮影:トニ−ノ・デリ・コリ 音楽:ジェ−ムズ・ホ−ナ− 出演:ショ−ン・コネリ−/F・マ−リ−・エイブラハム/クリスチャン・スレイタ−
★1327年、ヨーロッパで宗教裁判の嵐が吹きあれている頃、北イタリアのベネディクト修道院に、バスカヴィルのウィリアム(ショーン・コネリー)と見習修道士のアドソ(クリスチャン・スレーター)が重要な会議に出席するために向かっていた。キリストの財産をめぐる教皇派とフランチェスコ修道会とその争いをまとめるための会議であった。荘厳な修道院に着くとすぐ、ウィリアムは、若い修道士が不審な死を遂げたことを知る。修道院長(ミシェル・ロンダール)によれば、死んだ僧は、文書館でさし絵師として働いていたということだった。殺人のにおいがするこの事件の解明を、ウィリアムは頼まれることになったが・・・。(goo映画)

◎驚くのはこれだけのセットとロケ地を選んだスタッフの執念と力量である。この作品の魅力はいかにも西欧中世の雰囲気を再現したと観る者に納得させる映像にあるだろう。冒頭に近く厨房で働く僧たちが、解体した豚から絞った血液を大事に貯めているのは腸詰めを造るためなのだろうか。僧院に貢ぎ物を納めに来る貧者たちの描写もリアル感があって、こんな描写の一々の積み重ねが圧倒的な重厚感をこの作品に与えている。ただ、残念ながらワタクシの観たバ−ジョンは英語版であったのと、主役が米国の有名俳優であることとかのために最初から最後まで違和感があった。興行的には有名俳優を使うことのメリットはあるのだろうが、これだけの準備をした努力が主役の顔一つで台無しになってしまったように思う。またアドソを演じたクリスチャン・スレーターが妙に色っぽくて、その顔のアップを演出が多用するので恐らく僧院内に蔓延していたであろう同性愛の暗示が鼻に付いて、せっかく美術スタッフが盛り上げた雰囲気が薄められてしまったのも惜しまれる。出来ればイタリア語バ−ジョン(DVDには有るのか?)で見直してみたいものだ。呑気呆亭

11月28日(土)「12月のスケジュ−ル」

「12月のスケジュ−ル」
2日(水)薔薇の名前 '86・仏 ジャン・ジャック・アノ−
3日(木)汚れた血 '86・仏 レオス・カラックス
4日(金)ビバリ−・ヒルズ・バム '86・米 ポ−ル・マザ−スキ−
5日(土)臨時休業日
9日(水)無能の人 '90・松竹=富士 竹中直人
10日(木)映画監督川島雄三/サヨナラだけが人生 藤本義一
11日(金)蝉しぐれ '03・NHK 内野聖陽
12日(土)七人の侍はこう作られた 野上照代
16日(水)眺めのいい部屋 '86・英 ジェ−ムズ・アイボリ−
17日(木)臨時休業日
18日(金)暗闇のボクサ− '86・チェコ ヤロスラフ・ソウクップ
19日(土)ラウンド・ミッドナイト '86・米 ベルトラン・タベルニエ
23日(水)マックス・モン・アム−ル '86・仏 大島渚
24日(木)サクリファイス '86・仏 アンドレイ・タルコフスキ−
25日(金)チャイニ-ズ・ゴ-スト・スト-リ- '87・香港 チン・シウトン
26日(土)グッド・モ-ニング・バビロン '87・伊 パオロ・タヴィア-ニ
30日(水)歳末休業日
31日(木)歳末休業日
★邦画の上映は第二週のみ。シャ−プDLPプロジェクタ−⇒80インチスクリ−ン映写
★金曜日は西部劇・チャンバラDAY土曜日はリクエストDAY

11月28日(土)「ビッグ・トラブル」

「ビッグ・トラブル」('86・米)製作・監督:ジョン・カサヴェテス 脚本:ウオ−レン・ボ−グル 撮影:ビル・バトラ− 音楽:ビル・コンティ 出演:ピ−タ−・フォ−ク/アラン・ア−キン/ビバリ−・ダンジェロ/ヴァレリ−・カ−ティン/トロイ・ドナヒュ−/ロバ−ト・スタック
★主人公のレオナ−ドは安定した生活を望んで保険会社のセ−ルスマンを務めているが、現実はなかなかうまくいかない。そんな彼にスティ−ブ夫妻が保険金詐欺の計画を持ちかけてきた。一攫千金を夢みて話に乗った彼に、次々と災厄が起きる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎ワイルダ−の「深夜の告白」('44)をパロったというかおちょくった展開がバカバカしくて、“えっ、カサヴェテスともあろうものがこんな野暮ったいモノを?・・・”と思いながら見ていたのだが、フォ−クとア−キンの怪演比べがエスカレ−トして行くにつれて、まるで落語の「らくだ」のような奇妙な倒錯が徐々に生じて、遂には過激派の登場するどんでん返しになだれ込んで、モ−ツアルトの伴奏に彩られたハチャメチャなラストに至る。やっぱりカサヴェテスという人はただ者じゃあないなと納得したことであった。呑気呆亭