10月29日(木)「ストレンジャ−・ザン・パラダイス」

「ストレンジャ−・ザン・パラダイス」('84・米=西独)監督・脚本:ジム・ジャ−ムッシュ 撮影:トム・ディチッロ 音楽:ジョン・ル−リ− 出演:ジョン・ル−リ−/エスタ−・バリント/リチャ−ド・エドスン/セシリア・スタ−ク
ジム・ジャームッシュ長編映画第1作。ウィリーはニューヨークに10年住んでいる。ハンガリー出身で本名はベラ・モルナー。ある日彼のもとに、クリーブランドに住むおばさんから、16歳のいとこエヴァアメリカでの新しい生活を始めるべくブタペストから来るが、自分が急に入院することになってしまった為、10日間ほど預かってほしいという電話がかかってくる…。アクションもスペクタクルにも無縁で、モノクローム、主人公は3人の若者、音楽は弦楽四重奏と3拍子のロックンロール。なのに、ワンシーン・ワンカットに、奇妙なおかしさと、そこはかとない頽廃が感じられる、ジャームッシュの原点とも言える作品。<allcinema>

◎かつて文芸評論家の小林秀雄セザンヌの「カ−ド遊びをする人々」の絵を評して“ここには無明が描かれている・・・”と言ったが、このモノクロ映画の全編に流れるものはまさに「無明」としか言いようがない。人も景色も荒涼としていながらどこかユ−モラスな味わいがあって、殆どドラマ性のないシ−クエンスのつなぎ方もバッサリといった感じの無技巧で、それでいて退屈さを感じさせない。よくぞこんな映画を作ったなと感嘆させるが、この調子で映画作りを続けて行くことは難しいのではなどと余計な心配をさせられたのであった。呑気呆亭