10月24日(土)「アマデウス」

アマデウス」('84・米)監督:ミロス・フォアマン 原作・脚本:ピ−タ−・シェ−ファ− 撮影:ミロスラフ・オンドリチェク 音楽監督:ネヴィル・マリナ− 出演:F・マ−リ−・エイブラハム/トム・ハリス/エリザベス・ベリッジ
モーツァルトの死をめぐる豪華絢爛な舞台劇を、見事にフィルムに転化した傑作。物語はかつて宮廷音楽家だったサリエリの回想から入り、モーツァルトの人物像を追っていくのだが、そこに様々な音楽的見せ場やミステリーの要素を散りばめ、一瞬たりとも飽きさせない造りになっている。ヴォルフガング・アマデウスモーツァルトに一世一代の快演を見せるT・ハルス、妬みと誇りの共存するサリエリに扮したエイブラハム(アカデミー主演男優賞)の芝居も見事。<allcinema>

◎初見時にはトム・ハリス演ずるモ−ツアルトの余りと言えばあんまりな軽薄さにやや辟易したものだったが、今回見直してみてその印象は映画の軽快に描かれた前半しか記憶に残さなかったことによったのだと知った。実にこの作品の見どころはモ−ツアルトがオペラに挑戦し始める後半部分にある。「フィガロ」から「ドン・ジョバンニ」「魔笛」へとまったく色合いの異なる傑作オペラを生み出すには、さすがの天才モ−ツアルトにしてもその神与の才の大部分を使い尽さねばならなかった。その絞られ尽した力の最後の一滴をサリエリの企んだ「レクイエム」の制作によって消耗したモ−ツアルトは、神に愛された者に相応しい無残な死を遂げて見事に人生の帳尻を合わせたのだった。エンドロ−ルに流されるピアノ協奏曲の哀切なメロディがフォアマンのモ−ツアルトへの思いのすべてを語っているかのようだった。呑気呆亭