9月19日(土)「バチ当り修道院の最期」

「バチ当り修道院の最期」('83・スペイン)監督・脚本:ペドロ・アルモドバル 撮影:アンヘルルイス・フェルナンデス 音楽:カム・エスパ−ニア 出演:クリスティ−ナ・サンチェス・パスカル/フリエタ・セラ−ノ/マリサ・パレデス/リ−ナ・カナレハス/マリ−・カリ−リュ/マヌエル・サルソ
★破天荒なユ−モア・センスで独自の世界を展開するスペイン映画界の鬼才、P・アルモドバルが国際的に認められるようになった出世作。資金難から閉鎖寸前の状態にあるマドリッド修道院には5人の風変わりな修道女がいる。彼女らの実態は、神をも恐れぬ罪業を犯しまくるバチ当りな尼僧だった。(ぴあ・CINEMA CLUB)

★「駆け込み寺」を営む薬中のレズ尼長を筆頭に、肥溜め尼、ドブ鼠尼、堕落尼、毒蛇尼といったシスター達がその財政難に喘ぐ中、一風変わったじゃじゃ馬オンナ「歌うたい」のヨランダが殺人の濡れ衣を着せられたという設定で刑事達から此の修道院に逃げ込んでくることからアルモドバルの「頭のネジの外れた」ような物語が幕を開ける。ヨランダは本作中、主役的扱いながらも観客の視線でもあり、各修道女への眼差しの客観的な存在であって傍観の姿勢を周到に演じている。アルモドバルの啻ならぬ才能の表れなのだろう。構築力に長けている。彼自身の「ネジ」は緩いどころかカッチリと締まっているから安普請なコメディに終わっていない。『ハイヒール』以降の少々、自画自賛的な嫌味も無くデッチアゲ効果に依存せず、無理に「よし!ここで笑わせよう!」という前屈みな作為が無いのも非常に好感が持てる。ストーリーの平板さは否定できぬがその欠点を補って余りあるだけの素直な意欲があるようだ。薬中レズ・マドレが「ヘロインが性に合っている」などと豪語して尼僧姿でヘロインを慣れた手付きで腕に注射する様・・・「嗚呼!厳格なカトリックの国なんですね!」と逆に納得。(allcinema=theoria)

◎上記のtheoriaさんの解説に付け加えるモノはない。題名から想定されるスラップステイックな展開は殆どなく、コメディというよりかは風変わりな味わいのドラマを見させてもらったという感がある。呑気呆亭