9月9日(火)「われに撃つ用意あり」

「われに撃つ用意あり」('90・松竹=若松プロ)監督:若松孝二 原作:佐々木譲 脚本:丸内敏治 撮影:伊東英男/田中一成 音楽:梅津和時 出演:原田芳雄/桃井かおり/ル−・シュウリン/山口美也子/小倉一郎/西岡徳馬/石橋蓮司/蟹江敬三/室田日出男
★新宿・歌舞伎町を舞台に、ヤクザ絡みの犯罪に巻き込まれた元全共闘たちの戦いを描いたハードボイルド・ロマン。監督は「水のないプール」の若松孝二。歌舞伎町。スナック“カシュカシュ”のマスター郷田克彦。20年続いたこの店の閉店パーティー全共闘当時の仲間たちが集まった。そこにもう一人、台湾人の女ヤン・メイランもいた。が、メイランは実は、肉体関係を迫ってきた戸田組組長を撃ち殺してしまい、ヤクザに追われていたのだった。そんなメイランを郷田は匿うのだが……。

◎新宿の流行らないバ−の閉店パ−ティに、元全共闘のそれぞれがそれぞれに生き延びてきたことの屈託を抱えているメンバ−が集まってくるという設定が、同時代を生きてきた者としてはそそられるがまた気恥ずかしくもある。ところが原作が悪いのか脚本の練り方が足りなかったのか、原田と桃井だけがやや陰影を感じさせるが、他の連中にはその屈託を抱えて生きてきた年月の刻んだ凹凸が少しも感じられず、そのために一種のグランドホテル形式のドラマを狙ったのであろう若松孝二の演出もやや空回りしてしまったように思う。決して嫌いじゃないんだが・・・。呑気呆亭