8月19日(水)「ミッシング」

「ミッシング」('82・米)監督・脚本:コスタ・ガブラス 原作:ト-マス・ハウザ- 脚本:ドナルド・スチュワ−ト 撮影:リカルド・アロノビッチ 音楽:ヴァンゲリス 出演:ジャック・レモン/シシ-・スペイセク/ジョン・ショア/メラニ-・メイロン
★'73年9月、南米チリの軍事ク−デタ−のさなか、アメリカ人がひとりサンチャゴの自宅から姿を消した。近所の人の話では、兵士らしい者に銃をつきつけられ小型トラックに乗せられていったという。また別の目撃者によれば、そのトラックは反政府運動者たちを監禁しているサッカ−競技場へ向かったという。突如行方不明になった彼を追って、妻がそして父親が、ことの真相を求めて国家権力と正面から対決する。時、場所、出来事、人物すべて事実にもとづく、社会派コスタ・ガブラス入魂の会心作である。レモンとスペイセクの難しい役柄をみごとにこなした熱演ぶりが特に印象に残る。(ぴあ・CINEMA CLUB)

ジャック・レモンの成功したビジネスマンであることに露ほども疑いを持たぬ典型的なアメリカンが、世界を彷徨う根無し草のような息子夫婦に起きた失踪事件を契機として、息子の妻(シシ-・スペイセク)と反発しながらその行方を追う課程で、徐々に自省を深め「国家」というモノの正体に気付いて行く。こうした事実に基づくドキメンタリ−・タッチの映画に有名俳優を起用するとどうしても嘘っぽくなってしまうのがオチなのだが、例によって色々なクセを振りまきながらジャック・レモンがコスタ・ガブラスの世界に破綻なく入り込んでいるのはサスガといえる。それにしてもコスタ・ガブラスという人はこうした政治・軍事状況の切迫と混乱と恐怖を、イヴ・モンタンと作った三部作でもそうだったが、絵空事とは思えぬリアルさで描くになぜこれほどに巧みなのだろうか。呑気呆亭