7月18日(土)「グロリア」

「グロリア」('80・米)監督・脚本:ジョン・カサベテス 撮影:フレッド・シュ−ラ− 音楽:ビル・コンティ 出演:ジ−ナ・ロ−ランズ/ジョン・アダムズ/バック・ヘンリ−/ジュリ−・カ−メン
★マフィアの重大な秘密を売ろうとして惨殺された一家から男の子フィルを助けた中年女グロリア。しかし問題の秘密をフィルが持ち出していたことを知ったマフィアは少年をかくまったグロリアの命をも狙い始める。子供嫌いなグロリアは生意気なフィルを見捨てようとするが、次第に母性本能が芽生え、必死になってニューヨークを逃げまわるが…。リュック・ベッソン監督作「レオン」の原形とも思えるハード・ボイルド映画。本作でアカデミー候補にも上がったG・ローランズ(監督カサヴェテス夫人)の持つ、いやらしいほどしたたかな女の魅力が随所に光り、マフィアの一味に拳銃をブッ放つシーンや凄味の効いた笑顔はまさに“カッコイイ!”の一言! フィルとの絡みも絶妙で、監督の力量がいかんなく発揮された、ヴェネチア国際映画祭作品賞(金獅子賞)受賞作。<allcinema>

◎これはカサベテスの「裸の町」だなと、今回何度目かになる見直しをして思ったことだった。プロロ−グの入りがヤンキ−ス・スタジアムの俯瞰撮影から始まって、街路を行く路線バスを捉え、そのバスから何やら訳ありな女が買い物の荷物と共に転げ落ちるショットを繋げ、その女を追うキャメラがその女が背負った訳を解き明かして行く。見事な導入部である。ひょんなことからその女の家族の生き残りの息子を預かることになったグロリアが、実はかつての仲間であったマフィアが支配するニュ−ヨ−クの町中を敵に回して拳銃を唯一の武器として走りまわる。ロ−ランズがその引き締まった脚に履くハイヒ−ルは、俗に“ファック・ミ−・シュ−ズ”と言われる女らしさの象徴などではなく、正に“戦闘靴”の鋭さをもって路面に挑戦の足音を刻み込むのであった。呑気呆亭