7月22日(水)「ディ−バ」

「ディ−バ」('81・仏)監督・脚本:ジャン・ジャック・ベネックス 原作:ダニエル・ディエ 脚本:ジャン・ヴァン・アム 音楽:ウラジミ−ル・コスマ 撮影:フィリップ・ルスロ 出演:ウイルヘルメニア・フェルナンデス/フレデリックアンドレイ/リシャ−ル・ボ−ランジュ/チュイ・アン・リュ−/アニ−・ロマン
★スイスの作家ダニエル・ディエが発表したセリ・ノワ−ル小説第2作の映画化。監督は当時32歳のベネックスがあたり、みごとなサスペンス・ロマンを作り上げている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

★音楽を熱烈に愛する郵便配達夫の青年ジュールは、神秘的な歌声を持つディーバ=女神と出会い、彼女のアリアを盗み録りする。そんな中、彼のモビレッタ(原付自転車)に売春組織の内幕を暴露した告白テープが隠された事から、存在しない筈のディーバのテープ、地下組織の秘密が録音されたテープという2本のテープを巡って、彼はパリの町を逃げ、やがて迷路に迷い込んでゆく……。美しいラブ・ロマンスであるのと同時に、サスペンス、スリラー、はたまた一つの寓話でもある本作は、ジャン=ジャック・ベネックス監督の長編第1作にしてまさに傑作と呼ぶに相応しい作品である。青の色彩を基調とした統一された様式美、主人公ジュールの住むスクラップ・カーがオブジェとして飾られた異空間の様なロフト、様々なポップ・アートが点在し、少女アルバがローラー・スケートで走るゴロディシュの奇妙なアパルトマン、またはジュールが逃走するパリの地下鉄の迷路の様な複雑さと呼応するような、ジグソーパズルにも似た物語性…この作品は独創的な刺激と面白さに満ちている。<allcinema>

◎天上の声を持つディーバ=女神と地下社会にうごめく殺し屋や得体の知れないフランス男とベトナム女、その上層と下層を繋いでパリの下町にバイクを疾走させる青年ジュ−ル。キ−ワ−ドは録音テ−プ。錯綜する物語を綴る映像はまるで現代ア−トのように魅力的で、時折挿入されるディーバの歌声とともに不思議に蠱惑的なつづれ織りを織り成して、映画を観ることの歓びを与えてくれる。呑気呆亭