7月17日(金)「グレイフォックス」

「グレイフォックス」('83・カナダ)監督:フィリップ・ボ−ソス 脚本:ジョン・ハンタ− 撮影:フランク・タイディ 美術:ビル・ブロディ 出演:リチャ−ド・ファ−ンズワ−ス/ジャッキ−・バロ−ズ/ウエイン・ロブソン/ピ−タ−・オブライアン
★1901年、ビルという名の老人が33年の服役を終えて、サン・クエンティン刑務所を出獄してきた。彼こそが”ホ−ルドアップ”というセリフを初めて使った西部史上名高き紳士強盗“グレイフォックス”だ。彼は駅馬車専門の強盗だったが、時代は移り変わり、今では蒸気機関車が主役。堅気に戻ろうと努力するビルだが、やはり昔の血が騒ぎはじめ、列車強盗をたくらむ。1度目は大失敗。しかし、なんとかカナダへ逃げのびる。そこで良き相棒を得てから、今度はカナディアン・パシフック鉄道を襲い、7000ドルもの大金をせしめることに成功した。これがカナダ史上初の列車強盗として記録されることになる。相棒とビルのふたりはある町に身を潜め、ビルはそこで女写真家ケ−トに出会い急速に接近。しかしその幸せもつかのま、追っ手がすぐそこまで近づいていた。カナダの美しい自然と老紳士強盗の孤高の精神をみごとに描いて、'83年のカナダ・アカデミ−賞の主要7部門を独占した傑作。ファ−ンズワ−スは、これまで300本余りの映画に出演したという名バイプレ−ヤ−。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎33年の服役を終えて初老となったビルが、妹を訪ねて彼女の夫の世話で「蠣の養殖」の職を得て堅気に戻ろうとするのだが、彼は他人の描いた段取りで仕事をすることにどうしても馴染むことが出来ない。そうした己の性癖を自覚して元の稼業に戻ることを決意するのだが、そのことへの罪の意識も反省もないことが痛快である。そのビルがたまたま出会ったケ−トに見出したのは「男社会」の不条理に挑もうとする己に似た不屈の性癖であった。彼ら二人は当然のように恋に落ち、世間の常識を超える関係を結んで痛快な逃避行を完遂する。呑気呆亭