7月8日(水)「東京画」

「東京画」('85・西独)製作:クリス・シュバ−ニ 監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース 撮影:エド・ラッヒマン 音楽:ロ−リ−・ベッチガンド/ミ−シュ・マルセ−/チコ・ロイ・オルテガ 出演:笠智衆/厚田雄春/ヴェルナ−・ヘルツオ−ク
小津安二郎に影響を受けたというヴェンダースが、鎌倉にある小津の墓を訪ねる旅に、様々な東京の情景をからめて構成された、私的なドキュメンタリーである。道が風景を切り開かない日本での旅(ロード)は、静的で、まるで映像による俳句を見ているかのようだ。挿入される“画”は、列車の車窓、パチンコ、竹の子族…、そして、小津ゆかりの人々へのインタビュー・シーン。長廻しの小津作品を支える撮影の厚田雄春や、俳優・笠智衆との対話は、散文の叙述の迫力というものをまざまざと見せつける。なおこれは、今となっては、実に貴重な両名の記録となった。<allcinema>

◎撮影の厚田雄春と俳優・笠智衆へのインタビュ−は貴重だが、パチンコ屋だの花見の景色だのと東京の雑駁な映像を脈絡もなく記録して行く意図が奈辺に在るやが明瞭でなく、僅かに夜の盛り場を小津が常用したという50ミリのレンズで撮影したシ−ンが、まるで手品のように小津の世界を再現して見せてくれたことに驚いた。それくらいがこの「東京画」と名付けたドキメンタリ−の手柄であろうか。呑気呆亭