7月3日(金)「天国の門」

天国の門」('81・米)監督・脚本:マイケル・チミノ 撮影:ビルモス・ジグモンド 音楽:デビッド・マンスフィ−ルド 出演:クリス・クリストファ−ソン/ジョン・ハ−ト/クリストファ−・ウォ−ケン/イザベル・ユペ−ル/ジェフ・ブリッジス 
マイケル・チミノ監督の意欲作であり、公開当時その巨額の製作費で様々な物議を醸しだした問題作。共にハーバード大学で学んだ親友、エイブラルとアービン。そして20年後、保安官となったエイブラルはワイオミングで牧場主となっていたアービンと再会する。そして牛泥棒根絶の為に多数の農民を殺すという牧場主リーダーの計画を知ったアービンは、エイブラルに相談を持ちかけるが…。19世紀末のワイオミングを舞台に、ロシア・東欧系移民の悲劇を扱った一大叙事詩。そのスケールの大きさは、3時間を越える上映時間(劇場公開時は2時間半に短縮)の中で、冒頭の30分にも及ぶ卒業式のシーンを始め、セット内に本物のレールを敷いて実際の列車を走らせるなど壮大なスケールで描かれており、まさにチミノ監督の意欲を感じさせる超大作に仕上がっている。<allcinema>

◎ハ−バ−ド大学卒業式でのダンスパ−ティの壮麗な描写と、ドラマの半ばでの移民たちのロ−ラ―スケ−トなども出てくるダンスパ−ティなど、いかにもチミノ監督らしい描写を楽しみながらも、はて、この壮大なスケ−ルは何のためかと思い始める。特に冒頭の卒業式のシ−ンで卒業生代表として演説をしたア−ビン(ハ−ト)は、エイブラル(クリストファ−ソン)とともにこれから始まる物語の重要人物の一人であると思われるのに、その後ろくな働きもせず移民たちと牧場主側との消耗戦のなかで右往左往するだけのキャラクタ−とされているのは、インテリというものの根本的な弱さを露呈させる意図があったのだろうが、それが少しもドラマに深味を与える要素になっていないのは、明らかに脚本段階での失敗だったろう。エイブラルにしても同じ優柔不断さを性格の底に抱えているが、決戦の場でロ−マ方式という戦術を編み出すあたりで漸くインテリの存在する意味を見せてくれる。それにしてもこの戦いは何という無駄な殺し合いであったことか。呑気呆亭