7月2日(木)「普通の人々」

「普通の人々」('80・米)監督:ロバ−ト・レッドフォ−ド 原作:ジュディス・ゲスト 脚本:アルビン・サ−ジェント 撮影:ジョン・ベイリ− 音楽:マ−ヴィン・ハムリッシュ 出演:ドナルド・サザ−ランド/ティモシ−・ハットン/メアリ−・タイラ−・ム−ア/シャド・ハ−シュ/エリザベス・マクガヴァン
★平穏な日常生活を送っていた家族4人の家庭に、長男の事故死、続いて次男の自殺未遂という事件が起こる。この出来事を契機として、愛情と信頼によって固く結ばれていた筈の一家が、激しく揺り動かされ、目に見えない緊張が家の中を支配していく。そして映画は、3人がそれぞれの苦悩を抱えて噛み合わない歯車のようになったお互いの関係に直面する様子を描いてゆく。一人一人の人物の緻密な心理描写、物語全体を見据える鋭い視点、そしてその問題点の背景にある“社会”を浮かび上がらせる巧みさと、こういったテーマの作品でありながら決して重く退屈ではない、観客の目を意識した作品造り。レッドフォードの演出は、第1回監督作品とは思えないような優れたものを見せている。<allcinema>

◎主人公三人の緊張に満ちた関係をリアルに演じた俳優さんたちに賛辞を送りたい。実に丁寧に家族間の心理が描写されているので、重いテ−マであるが見守る観客を飽きさせない。レッドフォ−ドという人の才能の確かさを感じさせられた。しかし、ラストに近く、精神科医の励ましと唯一自分を理解し好んでくれる女の子の存在を得て回復に向かおうとした次男が、その昂揚する心を抱えて家に帰り、こだわりを越えて母に頬を寄せるシ−ンでは感動したのだったが、せっかくこの家族に安らかな生活が戻るかも知れぬと思わせておいて、その表情が和んだ母に、サザ−ランドの父親が長男の葬儀の時に喪服にはブル−のシャツは着るべきではないと言った妻の冷静さへの違和感を表白してしまって、夫婦は破局を迎えることとなる。妻は去り、残された父と息子が抱き合ってその喪失感に耐えるシ−ンで終ってしまうのには、何でだよといいたくなる違和感が残ったのだった。呑気呆亭