6月11日(木)「華の乱」

「華の乱」('88・東映京都)監督・脚本:深作欣二 原作:永畑道子 脚本:筒井ともみ/神波史男 撮影:木村大作 出演:吉永小百合/緒形拳/池上季実子/松田優作/石田えり/風間杜夫/松坂慶子/蟹江敬三/成田三樹夫
★大正時代、愛に芸術に命を燃やした男たち、女たちを豪華キャストで描く。晶子は何もかも捨てて、歌の師・与謝野鉄幹と結婚した。しかし年月が過ぎ彼女が11人の子持ちになった頃、鉄幹はすっかり無気力になっていた。そんなある日、晶子は作家・有島武雄に出会いひかれていく。他にもアナキスト大杉栄、女性運動家・伊藤野枝、近代演劇の巨星・島村抱月、スタ−女優・松井須磨子など歴史を彩った人物が次々登場。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎永畑道子氏の『華の乱』と『夢の架け橋』を巧妙に綴れ合わせて深作欣二は大正という時代のロマンチシズムを美しく映像化して見せてくれた。キャステイングも魅力的でそれぞれの誰もが知る登場人物の名と俳優さんのイメ−ジの齟齬あるいは重なりを楽しむことが出来た。中でも主演の与謝野晶子吉永小百合有島武郎松田優作の二人には華があって、衣装を含めて映画を観ると云うことの快楽を味あわせてくれたのだった。特に吉永小百合は「キュ−ポラのある街」のジュン(これこそが彼女の原点であり回帰するべきキャラクタ−なのだが)が蘇ったかと思わせるほどの生き生きとした快演であった。その後、何故か常に皇族化(侵しがたいキャラクタ−)してしまいがちである彼女の芸歴を思うと、彼女が敬愛する田中絹代さんが「サンダカン六番館娼館」であからさまにして見せてくれた老醜の凄さをこれからの彼女が演じきれるのかという疑問と期待を持つのである。呑気呆亭