6月10日(水)「AKIRA」

AKIRA」('88・東宝)原作・脚本・監督:大友克洋 製作:アキラ製作委員会 脚本:橋本以蔵 作曲指揮:山城祥二 作画監督なかむらたかし 美術:水谷利春 音楽:芸能山城組 撮影:三澤勝治 出演:金田:岩田光央/鉄雄:佐々木望/ケイ:小山芙美/大佐:石田太郎
★日本のコミック界を代表する鬼才・大友克洋が自らの長編大作漫画を劇場アニメ化。近未来の都市を舞台に、謎の存在“アキラ”を巡って、不良少年たちやアーミー、ゲリラ、宗教団体まで入り組んでの抗争や駆け引きを細かな描写で壮大に描く。2002年、「デジタル・サウンド・リニューアル版」としてリバイバル上映。
1988年、関東地区に新型爆弾が使用され、第3次世界大戦が勃発した――。2019年、ネオ東京。金田をリーダーとするバイクの一団は進入禁止の高速道を疾走していた。しかし、先頭にいた島鉄雄は突然視界に入った奇妙な小男をよけきれずに転倒、負傷する。小男と鉄雄は直ちに現れたアーミーのヘリに収容され飛び去ってしまった。翌日、鉄雄を捜す金田は、少女ケイと出会う。彼女は反政府ゲリラの一員で“アキラ”という存在を追っていた。その頃、鉄雄はアーミーのラボで強力なクスリを連続投与され、不思議な力を覚醒し始めていた…。<allcinema>

大友克洋の何だかすごい漫画が「週刊ヤングマガジン」に連載されているという噂を聞いて、単行本の発売を待ちかねてその第一巻「鉄雄」を手にしたのが1984年の秋だった。357頁のずっしりと重い単行本を開き“一九八二年十二月六日午後二時十七分 関東地区に新型爆弾が使用された・・・”との冒頭の頁から一気に物語にのめり込みたちまち読み終えたことを鮮明に覚えている。その単行本はカミサンから長男・次男と回され、異口同音に発したのは“次の巻はいつ発売になるんだろうネ”という言葉だった。
 それから毎年発売と同時に書店に駆け付け購入して、家長の権利として真っ先に息子たちの視線を背中に意識しながら、ことさら入念に読むと見せて焦らしたりしたのだった。最終巻を読み終える頃にはアニメ化の話が既に持ち上がっていて、1988年の公開時にはもちろん劇場に家族総出で出かけたものだった。
 ラストの増殖する鉄雄のイメ−ジは圧倒的な迫力で動画で見ることの醍醐味を十分に味あわせてもらったのだが、大友克洋の漫画作品の魅力は物語のダイナミックな展開を追うことの快感はモチロンなのだが、画面のそこそこに克明に書き込まれた細部へのこだわり(落書きなど)を味わい尽すことにもあるので、動画にそれを要求することは出来ないために、見終えてやや不満足な感想を持ったのはむろん無い物ねだりということであったろう。呑気呆亭