6月6日(土)「ディア・ハンタ−」

「ディア・ハンタ−」('78・米)監督・原案:マイケル・チミノ 原案・脚本:デリック・ウオッシュバ−ン 撮影:ビルモス・ジグムンド 音楽:スタンリ−・マイヤ−ズ 出演:ロバ−ト・デ・ニ−ロ/クリストファ−・ウオ−ケン/ジョン・サベ−ジ/ジョン・ガザ−ル/メリル・ストリープ
ベトナム戦争に赴いて心に傷を負った3人の若者の生と死を描いたM・チミノ渾身の一作。彼らの故郷であるペンシルヴァニアの田舎町を描いた淡々としたタッチが、一転、戦場では苛酷なまでの描写に切り替わり、よりいっそう戦争の悲惨さを訴えかける。中でも“ロシアン・ルーレット”の迫真性はただ事ではなく、それが再び繰り返されるクライマックスにはどうしようもないやりきれなさが漂う。デ・ニーロをはじめ役者陣も存在感に溢れ素晴らしい。アカデミー作品・監督・助演男優(C・ウォーケン)・音響・編集賞を受賞。<allcinema>

◎公開当時、何故か千葉県松戸市の映画館まで観に出かけ、圧倒的な印象を受けて帰宅した。プロロ−グの溶鉱炉の炎が飛び散る製鉄所のシ−ンが強烈でたちまちドラマに引き込まれた。若者たちが何の疑いもなく汗を流す労働の価値を信じ、その労働の報酬を存分に使って酒を飲み鹿狩りをして生活を謳歌する様が生き生きと描かれ、その若者たちの中から屈強の3人が、アメリカという当時世界で最も強力で正義を行う(と信じた)国家に奉仕するために、何の疑いもなくベトナム戦線への徴兵に応じて旅立つのだが、その戦線には狩る者(ディア・ハンタ−)から狩られる者となる未知の地獄が待っていたのだった。当時はその名も知らなかった俳優たちの熱演に痺れたのだが、中でもメリル・ストリープという俳優さんは、最初の印象では何でこんなに地味な言ってしまえばブスを監督はヒロインに選んだのだろうかと思ったのだった。それが様々な場面に登場して変容して行く彼女を見ている内に次第にその魅力に惹き込まれてゆき、遂にはその内面から醸し出される美しさにノックアウトされ、以来熱烈なファンとなったのだった。
今回見直してみて、戦場に於けるアメリカ兵の残虐さは省略され、ベトコンのサディスティックさばかりが強調されていることに違和感を覚えた。ベトコンとは即ち彼らにとっては東洋人一般を代表する者で、ラストのタイトルロ−ルには「チャイニ−ズ・ボス」などと記されていたのはそのことの現れではないかと思ったことだった。呑気呆亭