6月3日(水)「ジュリア」

「ジュリア」('77・米)監督:フレッド・ジンネマン 原作:リリアン・ヘルマン 脚本:アルビン・サ−ジェント 撮影:ダグラス・スロ−カム 音楽:ジョルジュ・ドルリュ− 出演:ジェ-ン・フォンダ/ベネッサ・レッドグレ−ブ/ジェ−ソン・ロバ−ツ/マクシミリアン・シェル/ハル・ホルブルック/メリル・ストリープ
★女流劇作家リリアン・ヘルマン回顧録の映画化。ジュリアとヘルマンは幼なじみであったが、第二次世界大戦前夜、ジュリアは反ナチの運動に加わっていた。そんなある日、劇作家として成功したリリアンのもとへ、ジュリアが人を介して反ナチの運動資金を届けてくれと依頼してくる。かけがえのない親友のためにリリアンは危険を覚悟でベルリンに向かう・・・。ふたりの女性の生涯にわたる友情と、リリアンと作家ダシ−ル・ハメットのプライベ−トな生活とを交互に描いたこの作品は、戦争によって親友を奪われたリリアンのナチに対する怒りが、深く静かに描かれている。ジュリア役のバネッサ・レッドグレ−ブの熱演が感動的な一編。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎ジェ-ン・フォンダが演じたのが原作者のリリアン・ヘルマンであること、そのリリアン・ヘルマンがワイラ−の「噂の二人」の作者でもあったことなどを思いながら、いつも変わらぬジェ-ン・フォンダというどんな作品に出演してもジェ-ン・フォンダ以外ではないという俳優さんの微笑ましさに、彼女が出演した「私が愛したグリンゴ」のことなども思い出されて、苦笑しつつ鑑賞。ナチ政権下のベルリンにまったく政治的にはウブであったヘルマン=フォンダが、幼なじみで密かな愛の対象であったジュリアのために危険な役を引き受けて潜入し、ジュリアの仲間の庇護を受けながらアメリカ女特有の強気を大いに発揮して切り抜けるあたりは、メキシコ革命の動乱に巻き込まれる「私が愛したグリンゴ」に被さるところがあって面白かった。この経験がヘルマンという作家に筋金を入れて、戦後の冷戦下、1952年に米下院非米活動委員会に呼び出され、共産党加入者の友人の名前を尋ねられ“たとえ自分を守るためであったとしても、長年の友人を売り渡すのは、わたしにとっては、冷酷で、下品で、不名誉なことであると言わざるを得ない。わたしは、政治には興味がないし、いかなる政治的勢力の中にも自分の居場所を見出したことはないが、それでもわたしは、今の風潮に迎合して、良心を打ち捨てることを潔しとしない。”と声明を読み上げて、彼女自身ブラックリスト入りをしたエピソ−ドに見られる強さを与えたのではなかったかと思ったことだった。呑気呆亭