3月24日(火)「ル−トヴィヒ・神々の黄昏」

「ル−トヴィヒ・神々の黄昏」('72・伊=西独=仏)監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ 脚本:ス−ゾ・チェッキ・ダミ−ゴ/エンリコ・メディオ−リ 撮影:アルマンド・ナンヌッツイ 音楽:フランコ・マンニ−ノ 出演:ヘルム−ト・バ−ガ−/ロミ−・シュナイダ−/トレバ−・ハワ−ド/シルバ−ナ・マンガ−ノ
★カットされていた1時間近くのシーンを復元した完全版で、ルードヴィヒ2世の生涯を描く壮大なドラマ。19歳の若さでバイエルン国王となったルードヴィヒ2世は、作曲家ワグナーに心酔し国費をつぎこむ。彼は従姉妹のオ−ストリア皇后エリザベートを恋するあまり、ソフィーとの婚約を破棄してしまう。やがて、1866年にオーストリアとの戦いに敗れ、ワグナーにも裏切られたルードヴィヒは、失意のどん底に突き落とされ、突如謎の死を遂げる。<allcinema>

◎ルードヴィヒに扮したヘルム−ト・バ−ガ−も好いのだが、エリザベートを演じたロミ−・シュナイダ−が堂々たる皇后ぶりで最初は別人かと思ったのだった。完全版で見たのだが240分は一度で見終えるにはきつく、二日がかりで観たのだった。長くはあるがさすがにヴィスコンティ、飽きることなく最後まで楽しめた。惜しむらくは作曲家ワグナーとの関わりがパトロンと被保護者の浅い関係以上には描かれていないために、ルードヴィヒのエリザベートに対する道ならぬ想いのみがルードヴィヒを狂気に駆り立てたかのように観る者には思えてしまう。ワグナーを理解しその世界の奈落にめり込んだディレッタントが因果にも国王であったというアイロニ−が彼を狂気に駆り立てたのだと考えれば、物語はもっと意味深い展開を見せたのではなかろうか。「夏の嵐」で見事にブルックナーの七番を映像化して見せたヴィスコンティにしては、今回は折角のワグナ−の音楽を活かしていなかったように思ったことだった。呑気呆亭