3月11日(水)「友よ、静かに瞑れ」

「友よ、静かに瞑れ」('85・角川)監督:崔洋一 原作:北方謙三 脚本:丸山昇一 撮影:浜田毅 音楽:梅林茂 出演:藤竜也/原田芳雄/倍賞美津子/林隆三/佐藤慶/高柳良一/六浦誠/室田日出男
★町の顔役と癒着する警察に逮捕された、大学時代の旧友の窮地を救うため、主人公が巨大な組織に挑んでいくという、ハ−ドボイルドタッチの友情物語。藤、原田、倍賞はいずれもはまり役。沖縄を舞台にした映像も、独特の雰囲気が出ている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎原作は読んでいないが、舞台を沖縄に移したことがこの映画に無国籍の雰囲気を与えていて、その舞台に配されたキャステイングとあいまって一種独特の見応えある作品になった。主演の藤竜也はやや小柄ながら最初のアクション・シ−ンで腰の入った見事な一撃を極めて我々を安心させてくれた。その藤竜也と組織の用心棒のボクサ−くずれ(原田)との凄まじい殴り合いも見応え十分であった。しかし、それよりも何よりもホテルのマダム役の倍賞美津子が好い。けだるい所作とかすれ声のエロキューションが何ともいえぬ色気をかもし出す。彼女が局部の火照りを冷水のシャワ−で鎮めるシ−ンを伏線として、別の夜、二階で眠る藤と階下の倍賞が互いの存在を強烈に意識し合う息詰まるカットバックで見せ、ついに夫の親友と関係を持つに至る過程を無理なく見る者に納得させたのは、ひとえに彼女のエロスと、時に割れたコ−ヒ−・カップのカケラを握って室田日出男の刑事に突きかかろうとする果敢さによるものだったのだと思う。呑気呆亭