2月11日(水)「惑星ソラリス」

惑星ソラリス」('72・ソ連)監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキ− 原作:スタニスラフ・レム 脚本:フリ−ドリヒ・ガレンシュテイン 撮影:ワジ−ム・ユ−ソフ 音楽:エドゥアルド・アルテミエフ 出演:ドナ−タス・バニオニス/ナタリア・ボンダルチュク/アナトリ−・ソロニ−ツイン/ニコライ・グリニコ/ユ−リ−・ヤルヴェット
★近未来、未知の惑星ソラリスの軌道上に浮かぶ宇宙ステーションで異常事態が発生。その調査のために科学者クリスは地球を出発する。到着したステーション内は荒れ果て、先発の3人の科学者は皆、狂気の淵に立たされていた。そして、クリス自身も数年前に自殺したはずの妻ハリーの姿を目撃し、言い知れぬ衝撃を受ける。だがそれは、人間の意識を反映して具現化させるソラリス表面のプラズマ状の海の仕業だった……。ポーランドの作家スタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』をタルコフスキーが映画化。ソ連製SFの代表作であると同時に、人間の潜在心理の持つ力を巧みに描き出した傑作。ソラリスが--いや、結局はクリス自身が--生み出した妻の幻影の描写など、まるで“愛の暴走”とでも言うべき狂おしさに溢れ、ラスト・シーン、クリスの意識を満面に受けたソラリスが創り出した情景には、深い郷愁の念を思い起こされる。“意識”の定義を大きく揺るがされる事だろう。ソラリスの海こそが、心の鏡であったのだ。これは、その鏡を覗き込んでしまったために、想いに取り憑かれた男の悲しい物語なのかもしれない。
<allcinema>

◎冒頭の沼のシ−ンからして妖しく美しい映像が展開される。水・流れ・意識・記憶がこの作品のテ−マなのだろう。映像の隠喩は錯綜していて難解でありしかも娯楽性がある。展開されるドラマの背後に垣間見える“人間とは?”という問いかけが晦渋ではあるが何処か知的な興奮を覚えさせるので、若いころに見たときの退屈さと眠気を覚えることがなかった。ラストの映像は何度見ても衝撃的で実際に「ソラリスの海」を覗き込む感覚を観る者に覚えさせ、荘子の“胡蝶の夢”を思ったことだった。呑気呆亭