2月10日(火)「ベニスに死す」

「ベニスに死す」('71・伊)監督・脚本:ルキノ・ヴスコンティ 原作:ト−マス・マン 脚本:ニコラ・バダルッコ 撮影:パスカリ−ノ・デ・サンチェス 音楽:グスタフ・マーラー 出演:ダ−ク・ボガ−ド/ビヨルン・アンドレセン/シルヴァ−ナ・マンガ−ノ
★作曲家グスタフ・マーラーをモデルにしたといわれている、マンの短編小説の映画化。「地獄に墜ちた勇者ども」「ル−ドヴィヒ・神々の黄昏」と並ぶヴィスコンティ監督の耽美世界3部作の一本。静養のため、水の都ベニスに来たドイツの老いた大作曲家は、ふと見かけたキリシア彫刻のように美しいポ−ランドの少年の容姿に、彼が長い間求めていた精神的な美と官能的な美との完全な結合を見出し、恍惚と苦悩、歓喜と絶望にふるえる。ヴィスコンテイは、原作の設定である主人公の小説家を直接マ−ラ−に模して音楽家とした。全編にマ−ラ−の「交響曲第5番」が流れ、官能のうねりをうたい上げる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎そもそもマ−ラ−の音楽が好きではないので、その作品「交響曲第5番」を使ってベニスと美少年と芸術家を彩ろうとしたヴィスコンティの意図に、'54年のフルトベングラ−の「ブルックナ−七番」の演奏を全編に用いて完璧な映像作品とした「夏の嵐」ほどの衝撃を受けることはなかった。ビヨルン・アンドレセンの美少年ぶりを誰しもが云々するが、ワタクシ的にはそれほどの悪魔的な「美」とは思えなかった。ゆえに、その「美」に狂って死への奈落を堕ちて行く主人公の行動には今一共感を覚えなかった。呑気呆亭