2月6日(金)「モンテ・ウォルシュ」

「モンテ・ウォルシュ」('70・米)監督:ウイリアム・A・ブレイカ− 原作:ジャック・シェ−ファ− 脚本:ル−カス・ヘラ−/デビッド・Z・グッドマン 撮影:デビッド・M・ウォルシュ 音楽:ジョン・バリ− 出演:リ−・マ−ビン/ジャンヌ・モロ−/ジャック・パランス/ミッチ・ライアン/ジム・デイビス/マット・クラ−ク
★いや、もうペーソスあふれた見事な映画!!
 あのワル役でならしたリー・マビンとジャック・パランスが失われていく西部をしんみりと、モローとともに描き出す。名前のしらぬ東部の「資本」が、カウボーイやサロンの女の生活を奪い取っていく、モローが死に際まで大事に小箱を抱えていたというそれを開けると、自分が「資本」だとあげたお金は手付かずのまま、自分の髪を切ってくれた鋏で亡き骸から髪を切り取り指に巻くマービン、マービン最高のシーンといわれている。彼は、町で、ショーティが乗りこなせなかった荒馬をみつけ、それを調教しようとして街中を壊す。西部の場所なら何も壊れないが、俺たちをおいだしていく街ではすべてが壊れていく。彼なりのせつない、進歩=街への反抗である。のりこなし、馬に「ありがとよ」というマービン。それを観て、ワイルドショーで高い賃金で使おうと誘う東部人、だが、マービンはバッファロー・ビルにもワイルド・ビル・ヒコックにもならない、つぶれゆく牧場へと帰っていく。逃がしてやったショーティが、友人パランスを殺してしまった。葬儀にもでずにショーティを追うマービンは、牛の屠殺場(=東部経済の象徴)で、もうマービンを撃てずに銃をガンベルトに納めるショーティを有無をいわせず撃ち殺す! もう相棒パランスはいない、ひとり馬に語りかけるマービン、そこに流れるThe Good times are Comingの歌、出だしでは違和のあった歌がバシッときまる。 このWalshは、raoul Walshへのオマージュか?! サロン女のモローを「貴婦人」と呼び続けるモンテ。パランスとの丁々発止が、実にいい。西部劇の名悪役たちが、詩情あふれて、善人になって、進歩する「社会」にノーといっている。「大会社がやったんではない、俺たちがやったんだ」という、仕事への自覚。牛が1頭いて、カウボーイが一人いればそれは牧場なんだというモンテは、なんで一番カウボーイがやってはいけない牛泥棒をしてしまったのかと、ショーティをせめるが、そこまで追い込まれてしまったカウボーイへのせつない怒りである。<allcinema=wild bunch>

◎これはもう上記の「wild bunch」さんの解説に言い尽くされているので、今さら加える言葉はない。渋くて心に沁みる西部劇である。忘れられた西部劇の名作3部作(他は「グレイ・フォックス」「ウイル・ペニー」)の1作に入れたいと思う。呑気呆亭