1月22日(水)「告白」

「告白」('70・仏=伊)製作:ロベ−ル・ドルフマン/ベルトラン・ジャバル 監督:コンスタンタン・コスタ=ガブラス 原作:アルトゥ−ル・ロンドン/リ−ズ・ロンドン 脚本:ホルヘ・センブラン 撮影:ラウ−ル・クタ−ル 出演:イヴ・モンタン/シモ−ヌ・シニョレ/ガブリエル・フェルゼッティ/ミシェル・ヴィトルド
★この作品は、51年にチェコスロヴァキアで起こったスランスキー事件を体験した夫妻の共著『告白』を映画化したものだ。スランスキー事件とは、当時チェコ共産党の高官だったアルトゥール・ロンドンほか14名が突然逮捕され、22カ月間監禁拷問され、身に覚えのない反逆行為の“自白”を強要されたあげく、裁判によって断罪された事件である。妻リーズは、突然の夫の失踪に何とか安否を尋ね廻るが、全く解らなかった。やがて突然に職場を追われ、事件が公表されると、党の為に公式に夫を否定しなければならなくなる…。
この急進的なスターリン主義者たちの策謀によって“自白”にサインした11名は死刑、アルトゥールを含めわずか3名が死刑を免れ終身刑となった。アルトゥールの名誉が回復されたのは、4年後の56年のことである。主人公の夫妻を実生活でも夫婦であるイヴ・モンタン(役名ではジェラール)とシモーヌ・シニョレが演じた。製作に当たっては“プラハの春”の時期にあたりチェコとの合作になる予定だったが、68年に多くの映画人の亡命者を出したことでも知られる動乱で断念を余儀なくされ、映画のエピローグとしてソ連の軍事介入の痛烈な批判が付け加えられた。なお、スチル写真はクリス・マルケルが撮影。コスタ=ガブラスの“伝統的な娯楽映画のテクニックを偽装し、利用しつつ、その政治性を大衆に到達させる試み”は、ここでも絶大な効果をあげている。<allcinema>

◎前作の「Z」でもそうだったが、制服というやつは人間味を喪わせるモノらしい。物語はまるでカフカの『審判』を思わせるような展開をみせるのだが、その随所に顔を見せる軍服を着た若者たちの、およそ表情というモノを見せず坦々と業務をこなしてゆく酷薄さにゾッとする思いをした。「告白」に追い込んでゆくテクニックを悪魔的に駆使する係官が、釈放されたジェラ−ルと街頭で出くわすラスト・カットで、職務を離れた係官はもう恐ろしくも悪魔的でもなく平凡な市民になっていることの衝撃は、ニンゲン性への信頼を喪わせるほどのモノであった。呑気呆亭