1月20日(火)「Z」

「Z」('69・仏=アルジェリア)製作:ジャック・ペラン/ア−メッド・ラシェディ 監督・脚本:コンスタンタン・コスタ=ガブラス 原作:ヴァシリ・ヴァシリコス 撮影:ラウ−ル・クヌ−ル 音楽:ミキス・テオドラキス 出演:イヴ・モンタン/イレ−ネ・パパス/ジャン・ルイ・トランティニヤン/ジャック・ペラン/ベルナ−ル・ブレッソン
★地中海に近いある国で、革新政党の指導者モンタンが暴漢に襲われた後、死亡する。当局は自動車事故による脳出血と発表するが、これに疑問を抱いた予審判事トランティニャンは新聞記者ペランの協力を得て真実に迫ろうとする。そして事件の背後に隠された陰謀にたどり着くのだが……。コスタ=ガヴラスが、故国ギリシャで63年に起きた自由主義者ランブスキ暗殺事件に材をとったヴァシリコスの原作を基に、軍事政権の恐怖と陰謀を描き出した問題作(当然、ギリシャでは上映中止となった)。その淡々とした描写は、リアリズムを生むと同時に緊迫感を盛り上げ、作品の持つメッセージを強く打ち出す。アカデミー外国語映画賞をはじめカンヌ国際映画祭審査員特別賞など多くの賞に輝いた。<allcinema>

既得権益を握って離そうとしないエスタブリッシュメントのやりきれなさと愚かしさとおぞましさがこれでもかというくらいに坦々と描かれる。特に軍服を着た連中の硬直したサデイズムにはゾッとさせられる。そのエスタブリッシュメントに眼光鋭く切り込んでゆく予審判事をトランティニャンが見事に演じている。ケチな利益誘導に踊らされて暗殺を請け負う町の連中にもリアリティがあって恐ろしく、ラストの字幕で軍部がク−デタを起こして予審判事も殺されてしまったことを知って、ニンゲンには「文明」を使いこなすことは無理なのかと暗澹たる思いにさせられたことだった。呑気呆亭