1月17日(土)「時代屋の女房」

時代屋の女房」('83・松竹)監督:森崎東 原作:村松友視 脚本:荒井晴彦 撮影:竹村博 音楽:大森敏之 出演:渡瀬恒彦/夏目雅子/津川雅彦/大坂志郎/初井言栄/藤木悠/藤田弓子/朝丘雪路/沖田浩之
★原作は村松友視の第87回直木賞受賞作。舞台となるのは、東京・大井町界隈。そこで古道具屋“時代屋”を営む安さん(渡瀬)のまわりには、女から女へ渡り歩きしている喫茶店のマスタ−(津川)や、元女プロレスの女房(藤田)にイビられながらも楽しく暮らす飲み屋の亭主(藤木)など、ユニ−クな人間がいる。ある日、安さんの所に日傘をさした女・真弓(夏目)が女房きどりで住みこんだ。自然にふたりは夫婦のように暮らすが、真弓は突然姿を消す・・・。森崎東お得意の人情喜劇。安さんをはじめとする人々をスケッチ風に淡々と描いた佳作。謎の女・真弓を演じる故・夏目雅子は、どこかはかなくカゲロウのような美しさと、圧倒的な存在感を合わせ持ち自らの魅力を発揮。惜しい逸材であった。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎前半は安さんを廻る町の人々がそれぞれに一癖ありげに描かれていて面白いのだが、真弓の度々の家出の動機をことさら秘密めかしたモノにしたために快調さが失われてしまった。その上に安さんがまたしても真弓に似た美郷という女とデキてしまったり、果ては東北まで「のぞきカラクリ」を遙々買いに出掛けたりして、面白くしようとした意図が空回りしてせっかくの夏目雅子を生かし切ることが出来なかった。ワタクシ的には夏目よりも安さんの父親の愛人役を演じた朝丘雪路のうっそりとした存在感と、幼い安さんを性的に覚醒させた妖しい浴衣姿の彼女の色気にマイッタのでありました。呑気呆亭