12月17日(水)「野獣死すべし」

野獣死すべし」('80・東宝角川春樹事務所)監督:村川透 原作:大藪春彦 脚本:丸山昇一 撮影:仙元誠三 音楽:たかしまあきひこ 出演:松田優作/室田日出男/小林麻美/鹿賀丈史/根岸季衣
★ハードボイルド作家大藪春彦の同名小説を1959年の仲代達矢主演作につづき再映画化。遊戯シリーズのコンビ、村川透監督、松田優作主演。伊達邦彦は、通信社のカメラマンとして世界各国の戦場を渡り歩き、帰国して退社した今、翻訳の仕事をしている。普段は落ち着いた優雅な日々を送っているが、戦場で目覚めた野獣の血が潜在しており、また、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳の持ち主であった。ある日、大学の同窓会に出席した伊達は、その会場でウェイターをしていた真田に同じ野獣の血を感じ、仲間に入れ、銀行襲撃を企む。<allcinema>

◎これは大藪春彦の原作とは関わりのない春樹=村川=優作の「野獣死すべし」である。原作には復讐という明確なテ−マがあったが、この映画の伊達邦彦には生きる目的も確たる行動原理もない。それもそのはず彼は既に死んだ目を持つゾンビなのである。そのゾンビを演ずるために優作は奥歯を4本抜いて撮影に臨んだと聞くが、その怪優三國連太郎の行為をなぞったような意気込みに、恐らく村川透監督以下のスタッフは悪霊に憑かれてかのような思いで奈落に落ち込んで行く優作に引きずられて行ったのだろう。優作のこの作品に懸けた思いとは何か。ズバリそれは「青春の異様さ」を描ききりたいという思いだったろう。ラストの日比谷公会堂のシ−ンでは思わず涙したことだった。怪作である。呑気呆亭