12月16日「ツィゴイネルワイゼン」

ツィゴイネルワイゼン」('79・シネマプラセット)製作:荒戸源次郎 監督:鈴木清順 脚本:田中陽造 撮影:永塚一栄 美術:木村威夫 音楽:河内紀 出演:原田芳雄/大谷直子/藤田敏八/大楠道代/麿赤児/玉川伊佐男/樹木希林
★今では昔話になってしまったド−ム型移動映画館、シネマ・プラセットで製作・上演され、自主公演としては異例のロングランを記録し、ト−タルで5万6千人の観客を動員して大ヒット作となった。内田百輭の「サラサ−テの盤」と多くの短編のアイデアをもとに、時間と空間、現実と幻想の間を映像がさまよう不思議な世界を生み出した。主演の4人がどれも個性的な魅力をみせ、原田芳雄の狂気、大谷直子の陰影、幽艶な大楠道代、そしてその間でとまどいためらう藤田敏八と、絶妙な対照をなしている。なかでも強烈なのが、だんだんと死の世界にとりつかれてゆく大楠道代で“腐りかけがおいしいの”と熟しすぎた水蜜桃を舌でチロチロと舐めるシ−ンと、それに対応するように原田芳雄の目の中に入ったゴミを舐めとるシ−ンには色気というよりは殺気をはらんだ妖気がある。この妖気が全編をおおい、2時間を超す長尺を感じさせぬ緊張した作品となっている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

原田芳雄が暴れまくる前半の面白さと、彼が死んでしまった後に残された連中が演ずる怪談風の後半部の重ったるさが異質で、出来れば前半の面白さのままラストになだれ込んで欲しかった。前半のキ−ワ−ドであった麿赤児率いる3人の門付け芸人の意味するモノが原田芳雄の狂気にラストまで絡んで行けば、とてつもないアナ−キ−な結論に辿り着いたのではなかったろうか?呑気呆亭