12月10日(水)「真夜中のカ−ボ−イ」

「真夜中のカ−ボ−イ」('69・米)監督:ジョン・シュレシンジャ− 脚本:ウォルド・ソルト 撮影:アダム・ホレンダ− 音楽:ジョン・バリ− 出演:ダスティン・ホフマン/ジョン・ボイト/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マッキヴァ−/ブレンダ・バッカロ
★金持ち女の相手をして金を稼ごうと、テキサスの片田舎からニューヨークへやって来たジョー(ヴォイト)。だが現実の壁は厳しく、カウボーイを気取る彼の夢は遠のいていくばかり。そんなジョーが知り合ったのがラッツォと呼ばれる一人の男。始終咳き込み足を引きずって歩くその小男と、ジョー。大都会のはみだし者同士、次第に友情を深めていく二人だが、ラッツォの病状は日増しに悪くなっていた。ジョーは、フロリダへ行くというラッツォの夢を叶えようとするのだが…。
 ふんだんに取り入れられた60年代末のアメリカの風俗描写の中、夢はあれどもそれをどう実現していくかが判らないまま、日々に押し流されていく孤独な男たちを、イギリスからやって来たJ・シュレシンジャーが活写したアメリカン・ニュー・シネマの傑作。そしてジョー、ラッツォそのものといったヴォイト、ホフマンの存在感の凄さ(オスカーは逃したものの、二人そろってアカデミー主演男優賞にノミネートされている)。その題材と描写から、成人映画扱いのXレイトとなるが、アカデミー賞(作品・監督・脚色)を受けた後、レイティングは撤回された。ニルソンの主題歌『噂の男』と、J・バリーの切ないメイン・テーマも秀逸。公開25周年を記念して製作された「特別版」(アメリカでは限定公開もされた)には、50分に及ぶメイキングやインタヴュー、それにヴォイトのスクリーン・テストのフィルムなども収録されており興味深い。<allcinema>

◎公開当時に見たときはラッツォ(ホフマン)の最期に涙を流したのだったが、今回見直してみて印象に残ったのはジョン・ボイトの演技だった。いい気な若者でしかなかったカ−ボ−イが都会の生活の現実に晒されて次第に性格に深みを増して行き、ついに他者(ラッツォ)を認識するに至る課程が丁寧に描かれている。彼にとってはこれはコペルニクス的転回であって、友の死を抱えてフロリダへ到着したカ−ボ−イはその後どう生きたかに興味をそそられたのだった。フロリダには“バードケージ”のオーナー兼演出家のアーマンドと、彼の良き相棒であり店のトップ・スターのアルバートという、或る意味で良きアメリカを象徴する二人の大人がいることを知らせてやりたいものだ。呑気呆亭