12月9日(火)「カルカッタ」

カルカッタ」('69・仏)監督:ルイ・マル 撮影:エチエンヌ・ベッケル ナレ−ション:ルイ・マル
◎1968年のインドの都市カルカッタを撮影したドキメンタリ−。ルイ・マル唯一のドキメンタリ−。プロロ−グはガンジス川の支流であるフ−グリ川の河港であるコルカタ(現地呼称)港周辺で沐浴する人々の姿を、舐めるようにキャメラが捉えて行く。そこで気が付くのは女性の姿がないことである。ルイ・マルのナレ−ションとともにキャメラコルカタの雑踏を縫って動き回り、アジア的とはちょっと違うインド的な風景を映し出して行く。コルカタは19世紀には黄金のベンガルと呼ばれた豊かさを背景に、ラビンドラナート・タゴールなどの大詩人を多く輩出した。マザー・テレサが1948年から1997年まで活動を行ったのもコルカタであるという。その文化的にも経済的にも豊であったコルカタの一面をルイ・マルは見ようともせず、ひたすらインド的な土俗性とこれ以下はないだろうと思われるほどの貧困を映し出して行く。見終えて思ったのは、何のためにルイ・マルはこれを撮ったのかということだった。呑気呆亭