12月6日(土)「フェイシズ」

「フェイシズ」(68・米)製作:モ−リス・マッケンドリ− 監督・脚本:ジョン・カサベテス 撮影:アル・ル−バン 音楽:ジャック・アッカ−マン 出演:ジ−ナ・ロ−ランズ/ジョン・マ−リ−/シ−モア・カッセル/リン・カ−リ−/フレッド・ドレイパ−/ヴァル・アヴァリ−
★「愛の奇跡」を製作者スタンリー・クレイマーに改竄され、ハリウッドでの映画作りに嫌気をさしたカサヴェテスが、抵当に入れた自宅を舞台に作り上げた独立資本作品。初心に還った彼は、六ヶ月の撮影に無償で奉仕する素人スタッフに支えられ、自分の役者としての収入も全てつぎ込み映画を完成。オスカー三部門でノミネートと素晴らしい成果を挙げ、結果的にはハリウッドに自分の一匹狼としての存在を認知させた。題名通り、七人の登場人物の表情ばかり追ってフレームなど気にせぬ生き生きとした画面が、僅か一日半のうちに崩壊する夫婦の物語を悲哀より滑稽味を前面に出し、語ってゆく。胸を衝くのは役者たちの存在感。特に撮影の手伝いをしながら演じていたというS・カッセルが素晴らしい(オスカー助演賞候補となった)。さて、映画は、ある娼婦の家で飲み騒ぐ二人の男の描写に始まる。主人ジェニー(ローランズ)をめぐって旧友と諍いを起こすリチャード(マーリ−)は彼女に惚れているようだ。帰宅した彼はすぐにでも妻マリア(L・カーリン)にそれを切り出したい。しかし、いつも通りの夕飯をとり、ベッドに入る。そして翌日、急に離婚の意思を告げた。妻はただ戸惑う。一方、ジェニーと会うリチャードは彼女の家に泊まる、と今までにない行動に出る。マリアは気晴らしに友人たちとディスコへ。踊っていた若者チェット(カッセル)を自宅に連れ込み語り合うが、奔放なことを口では言いながら友人はすごすごと帰ってしまい、やがてマリアは彼とベッドを共に……。しかし、目覚めたチェットはマリアが睡眠薬自殺を図ったと知りうろたえる。必死に彼女を救おうとするうち、愛に気づく青年(見事な場面だ)。映画はこんなにも自由でよいのだ--と教えてくれる革命的傑作。<allcinema>

◎なるほど人間とは顔・フェイスなのだ。ワイザツで哀れでコッケイで可愛くて、そしてなんと切ない生き物なのだろうか・・・。呑気呆亭