12月3日(水)「影の軍隊」

影の軍隊」('69・仏)監督:脚本:ジャン・ピエ−ル・メルビル 原作:ジョセフ・ケッセル 撮影:ピエ−ル・ロム 音楽:エリック・ド・マルサン 美術:テオバ−ル・ム−リッス 出演:リノ・ヴァンチェラ/シモ−ヌ・シニョレ/ジャン=ピエ−ル・カッセル/ポ−ル・ム−リス
第二次世界大戦のさなかに出版された、ジョセフ・ケッセルの抵抗運動を描いた小説の映画化。ナチス占領下のフランス。対独抵抗運動のため密告されてゲシュタポに捕まった学者のジェルビエは、処刑寸前に脱走してマルセイユレジスタンス・グル−プにかくまってもらい、彼らと一緒に裏切り者を始末する。それから彼はパリに潜入する。パリではジャン・フランソワや女闘士のマチルドが活動を続けており、ジェルビエはジャン・フランソワの兄の学者、実は影に隠れた組織のボスであるジャルディからロンドンのド・ゴ−ルと連絡を取るように命令される・・・。戦時下のフランスでレジスタンスとして闘って死んだ人々の姿を簡潔なスタイルで描いた名作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎中盤までずっと息を詰めて観ていて、この映画にはほとんどと言っていいくらい効果音(音楽)が使われていないことに気が付いた。物語は坦々とリノ・ヴァンチェラ演ずる対独抵抗者ジェルビエの行動を追うのだが、張り巡らされたナチの諜報網と警戒線を危うく突破しながら抵抗運動に身を捧げて行く課程が迫真的に描かれていて、見ている此方はそれこそ固唾を呑んで画面に見入っているしかない。占領軍に対して本土では何の抵抗も示すことなくあっさりと首都を明け渡してしまったという情けない歴史をもつ我々ニッポン人としては、この映画や「パリは燃えているか」などによって描かれた粘り強く献身的な抵抗運動というものには、ある種の憧れと共に敬服の念を抱かざるを得ない。娘の写真を所持していたがために組織を裏切らざるを得なかったマチルド(シモ−ヌ・シニョレ)のエピソ−ドには、腹の底にズンと居座り残る感銘を受けたことだった。傑作であります。呑気呆亭