11月26日(水)「ブリット」

「ブリット」('68・米)監督:ピ−タ−・イエ−ツ 原作:ロバ−ト・L・パイク 脚本:アラン・R・トラストマン 撮影:ウィリアム・A・フレイカ− 音楽:ラロ・シフリン 出演:スティ−ブ・マックイ−ン/ジャクリ−ン・ビセット/ロバ−ト・ボ−ン/ドン・ゴ−ドン/ロバ−ト・デュヴァル
★サンフランシスコの坂道を活かした、壮絶なカーチェイス・シーンが見ものの刑事アクション。ギャング組織壊滅のため、司法取引によって一人のギャングが証人として当局に保護された。だが、護衛を担当した刑事ブリットのミスで、証人は殺されもう一人の刑事も重傷を負ってしまう。ブリットは、証人が生きている、という偽の情報を流し、殺し屋を誘き寄せる作戦にでるが……。流麗にしてスタイリッシュなタイトルバック、マックィーンのニヒルな魅力、P・イエーツのタイトなアクション描写、そしてL・シフリンのジャジーサウンドトラック、すべてがキマってる。<allcinema>

◎公開当時映画館で見たときに一番記憶に残ったのは、つまらないことだがブリットが同僚の刑事に叩き起こされて、ベッドで頭を掻きむしりつつ瓶からインスタントコーヒーをスプ−ンでコップに移し、コップの中のコ−ヒ−を沸かすために電熱線を仕込んだ器具を直接差し込むという何気ないカットであった。へえェ、さすがアメリカには便利なモノがあるんだなァと妙な所に感動したことを覚えている。
以来ビデオなどで何度か見ることがあって、幾つかの疑問を持っていたのだが、今回見直してみて漸く了解したことがある。それはマフィアの金を横領したピ−ト・ロスの身代わりになったレニックがなぜ匿われている部屋の掛けがねを外したのかということなのだが、レニックは先ずホテルでピ−ト・ロスへの伝言の有無を訊いて自分がロスであることを印象づけ、次にチャルマ−ス議員に電話をして保護を要請する。次に長距離電話を掛けて、恐らく身代わりを金で引き受けさせそのカタに己の妻を人質に取っているロスの指示を仰いだのだろう。恐らくレニックはその指示に従って掛けがねを外したのだろうが、一体何と言われたからだったのか?恐らく殺し屋は刑事を殺すだけで、後は殺し屋と一緒に行方をくらませてくれとでも言われたのだろうか?
さて、ここでの疑問は、なぜプロの殺し屋ともあろうものが散弾銃を使いながら刑事は脚を撃つだけ、レリックは左肩を撃ち抜くだけですませて止めを刺さなかったのかということである。恐らくこの殺し屋はロスがマフィアにたれ込んで差し向けさせたのであろうから、二人を半殺しにしたまま逃走した意味が分からない。もっとも、ここで二人が即死してしまえば、物語は終わってしまい、ブリット=マックイ−ンのドジな殺し屋とのカ−チェイスもあり得なくなるわけだから、是非ともこの奇妙な齟齬は必要だったのだろうが、せっかくマックイ−ンを主役に据えたのだからもっと脚本を練り上げてこんな見やすい齟齬のない物語にして欲しかったと思う。呑気呆亭