11月25日「カラマ−ゾフの兄弟」

「カラマ−ゾフの兄弟」('68・ソ連)監督・脚本:イワン・プイリエフ 原作:ドストエフスキ− 撮影:セルゲイ・ウルセスキ 出演:ミハイル・ウリヤノフ/マルク・プル−ドキン/リオネラ・プイリエフ
★ドストエフスキ−に造詣の深いプイリエフ監督が律儀をきわめたアプロ−チから行った“本場”もの。長大な原作の中から兄弟たちの父親殺しと、長男ドミトリ−(ウリヤノフ)とグル−シェンカ(プイリエフ)の愛に重点をおき、親子兄弟の葛藤を赤裸々に描く。この映画の撮影中プイリエフ監督が急死。ドミトリ役のM・ウリヤノフらがその志を継いで完成させた。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎延々227分もの作品で、三部に分れている。所蔵のVHSテ−プでは一部・二部が一巻で三部が一巻に収められている。一部・二部でのグル−シェンカ(プイリエフ)は輝くばかりの妖しい美しさなのだが、ドミトリ−(ウリヤノフ)の真意を知って彼一人を慕い始める第三部の頃からその輝きが失せたかに見えるのは、夫であるイワン・プイリエフ監督の急逝の哀しみによるものだったのだろうか。原作を読む人それぞれに思いは有るだろうが、ワタクシ的にはこの「カラマ−ゾフの兄弟」という小説作品中で一番興味深く心を惹かれるのはこのドミトリ−・イワン・アリョ−シャの兄弟三人ではなく、親父のフョードルの複雑怪奇な性格(兄弟三人を全て含む)なのだが、この映画はドミトリ−とグル−シェンカの恋模様にドラマを絞ってしまったために、フョードルが単なる強欲な年寄りの類型としてしか描かれていることが不満であったのだが、これは無い物ねだりということだろう。呑気呆亭