10月14日(火)「男はつらいよ・葛飾立志編」

男はつらいよ葛飾立志編」('75・松竹)監督・脚本:山田洋次 脚本:朝間義隆 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演:渥美清/倍賞千恵子/前田吟/下條正巳/三崎千恵子/太宰久雄/小林桂樹/樫山文枝/桜田淳子
★寅さんが何を思い立ったか学問を志す、という一編。かつて想いを寄せた人の娘(桜田)の面倒をみるうちに学問の大切さが身にしみて来た寅次郎。ちょうど“とらや”には大学に残って考古学を研究している女性(樫山)が下宿することになったから、さあ大変。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎シリ−ズ16作ともなるとタコ社長を含めた“とらや”の人々のアンサンブルが見事に確立していて、手前で芝居している寅とおいちゃんの向こうにいるさくらやおばちゃんやひろしやタコ社長たちが思い思いに芝居をしているのが良く分かり、またその人物たちの配置が絶妙にキャメラに捉えられていて、主人公から眼を外して脇の見逃しかねない細かい芝居を見ることができるという楽しみを与えてくれる。その良い例が、考古学者を演じた小林桂樹がタバコの煙とともに団子とお茶を一緒に飲み込んで目を白黒させるという芝居を見守る樫山文枝を含めた寅たちの、それぞれに呆れた顔の色々が笑わせてくれるシ−ンであった。ワタクシ的には「男はつらいよ」は第八作で終わるべきであったというのが持論だが、こうしたアンサンブルの面白さを見るとシリ−ズ化も捨てたモンじゃないかと思ったりしてしまう。呑気呆亭