10月11日(土)「男の争い」鎌倉夜学シネマ

「男の争い」('55・仏)監督・脚本:ジュ−ルス・ダッシン 原作・脚本:オ−ギュスト・ル・ブルトン 脚本:ルネ・ウェレル 撮影:フィリップ・アゴスティ−ニ 音楽:ジョルジュ・オ−リック 出演:ジャン・セルヴェ/ロベ−ル・マニュエル/カ−ル・メ−ナ−/ジュ−ルス・ダッシン/マガリ・ノエル/ロベ−ル・オッセン
★オーギュスト・ル・ブルトンの小説を原作者のル・ブルトン、「七つの大罪」のルネ・ウェレル、監督のジュールス・ダッシンの三人が脚色し、「裸の町」のジュールス・ダッシンが監督、「快楽」のフィリップ・アゴスティニが撮影を担当する。音楽は「恐怖の報酬」のジョルジュ・オーリック。主なる主演者は「ガラスの城」のジャン・セルヴェ、「二百万人還る」のジャニーヌ・ダルセー、「筋金を入れろ」のマガリ・ノエル、ペルロ・ヴィタの仮名で出演する、ジュールス・ダッシン、など。なおシャンソン「ル・リフィフィ」の作詞はジャック・ラリュ、作曲はフィリップ・ジェラールである。(goo映画)
★五年ぶりで出獄するトニイ(ジャン・セルヴェ)を迎えたジョウは、昔の恩義を忘れず、トニイに一旗挙げさせようと、仲間のマリオと共に宝石商ウェブ商会に押し入る計画に彼を誘った。だがトニイはその前に情婦のマドーに会いたかった。彼女はピエールの経営しているナイトクラブ「黄金時代」の女給頭だが、今ではピエールの女になっているという噂だった。マドーの不倫を確かめたトニイの肚はきまった。ジョウたちはミラノから金庫破りの名人セザール(ペルロ・ヴィタ)を呼んで、警戒厳重なウェッブ商会を襲撃し、二億フランの宝石を奪いとることに成功したのだが・・・。(goo映画)

◎「鎌倉夜学シネマ」にて、恥ずかしながら初見。有名な(と言われる)台詞なし音楽なし、現実音のみの30分の宝石強奪のシ−ン、嬉しくなるのは周到に準備された道具の数々である。金庫室の上階から床を破って侵入する手口の大胆さ。床を破るジョウのかつての職を思わせるハンマ−と鏨の使い方。力仕事を終えたジョウにご苦労さんとワインのボトルを差し出すマリオ。破った穴から侵入するために垂らされる結びこぶを作ったロ−プ。トニ−発案の警報器を黙らせるための消化器。重い金庫をうつ伏せにさせるための力仕事。裏返った金庫の鉄板に金庫破りのプロのセザ−ルが付ける四つの印。はて?と思わせるが、セザ−ルの持ち出した電動ドリルがその印に金属ドリル刃で穴を開け始める。モ−タ−の回転音を抑えるためにマリオが巻き付けるタオルとゴム輪。ドリルの刃先にマリオが注ぐ冷却のためのオイル。折れたドリル刃を素早く取り替えるセザ−ル。開けられた穴に四本の支柱がネジ込まれて、その支柱に円盤カッタ−が装着され、取り付けられたハンドルを動かして厚い鉄板を削り始める。時間は刻々と過ぎて明け方の表通りには花屋への配達車が動き出す。深夜からここまで約五時間の仕事を少しの無駄もなく描いた台詞なし30分の緊迫。完璧な準備によって成功したかに思われた仕事だったが、セザ−ルの犯した小さなル−ル破りの行動から事態が綻び始めて・・・。これ以降のギャングたちの抗争がまさにフイルム・ノワ−ルの真骨頂なのだが、それは実際に見てのお楽しみ。呑気呆亭