9月20日(土)「喜劇・女は度胸」

「喜劇・女は度胸」('69・松竹)監督・脚本:森崎東 原案:山田洋次 脚本:大西信行 撮影:高羽哲夫 美術:熊井正雄 音楽:山本直純 出演:倍賞美津子/渥美清/河原崎健三/花沢徳衛/清川虹子/沖山秀子/有島一郎
★「男はつらいよ」の第1作をはじめ、山田洋次のいくつかの作品の脚本共作者であった森崎東が、山田洋次の原案に基づいて撮りあげた監督デビュ−作。働かずに酒に酔っては寝転がっている父、不機嫌な顔で黙々と内職を続ける母、荒っぽいダンプカ−の運転手の兄、気弱な自動車修理工の弟からなる桃山家で、兄と弟のそれぞれの恋人が取り違えられることから起こる、下品で活力溢れる騒動。ささいな言い争いが一気にエスカレ−トして、怒りを爆発させてドタバタに至る親子ゲンカの場面はもちろんのこと、そんな男たちの怒声を吸い込んでも動じない女たちのバイタリティも印象的。(ぴあ・CINEMA CLUB)

倍賞美津子はこれが初主演。後年の子宮から発するかと思えるセクシ−でハスキ−なエロキュ−ションはまだ発揮されておらず、役柄から地味で清楚な処女として登場する。しかし、気弱な河原崎健三の横っ面を張るシ−ンでは彼女のその後を想像させるようなパンチを炸裂させる。桃山家の主婦であり酔っ払いの夫を内職で支える妻でもある清川虹子が、夫を仰天させる告白をして、一家の分裂を決定的にするのだが、渥美と河原崎の兄弟はそれぞれに似合いの相手を得て家を出ることになる。さて、残されたのはカ−チャンの告白にショックを受けた飲んだくれのト−チャン花沢徳衛である。息子たちと水中での立ち回りを演じて濡れ鼠となり、ガタガタ震えるト−チャンを寝かしつけて・・・翌朝、カ−チャンは何ごともなかったかのように洗った男物と女物のパンツを物干し竿にへんぽんと翻えらせる。秀逸なラストでありました。呑気呆亭