9月18日(木)「木枯し紋次郎」

木枯し紋次郎」('72・東映京都)監督・脚本:中島貞夫 原作:笹沢佐保 脚本:山田隆之 撮影:わし尾光也 出演:菅原文太/小池朝雄/山本麟一/伊吹吾郎/江波杏子/渡瀬恒彦/賀川雪絵
★上州無宿紋次郎は、日野宿の貸元、井筒屋仙松殺害の罪で三宅島に流された。紋次郎は日野宿にある兄弟分の左文治の家に滞在していたのだが、ある日、紋次郎が心秘かに思いを寄せていたお夕が、井筒屋仙松に手ごめにされそうになり、左文治が斬殺してしまった。紋次郎は、左文治が、病床の母を思い嘆くのを聞き、死水をとるまでと、身替りに自首することにしたのである。島の生活は苦しく、悲惨であった。飢えをしのぐ道は、島民の情にすがり仕事を与えて貰うだけだった。果てしない海に突き出た断崖の上の二本の蘇鉄。流人たちは、この蘇鉄に赤い花が咲くと御赦免船が来ると信じ、赦免花と呼び最後の夢を賭けていた。(goo映画)

菅原文太の痩せ方は異常なほどで、遠景では電信柱が着物を着て歩いているように見える。三宅島での流人生活はかなり丁寧に描かれていて、時代考証もしっかりしているような印象を受ける。紋次郎が竹を削る細工の腕を活かして、土地の古老から預かった切り出しで竹ひごを削り、それで籠を編むシ−ンで文太は器用なところを見せる。その切り出しは作業ごとに古老に返還する定めになっていたのだが、すっかり紋次郎を信用した古老はその切り出しを預けっぱなしにすることにした。その切り出しが後の島抜け行で重要な役割を果たすことになる。もう一つ、島抜けして伊豆に流れ着いた紋次郎が、一緒に抜けて怪我をした伊吹を助けるために着物の襟を解いて小粒銀を取りだす仕掛けも中々面白かった。こうして、細部では面白い仕掛けがあって楽しめたのだが、紋次郎を囲む面々がすべて軽薄な裏切り者ばかりであることが、物語を薄っぺらなモノにしてしまったように思う。せめて、紋次郎が思いを寄せていたお夕だけでも・・・と思うのは無い物ねだりか。呑気呆亭