9月16日(火)「潮騒」

潮騒」('75・東宝=ホリ・プロ)監督:西川克己 原作:三島由紀夫 脚本:須崎勝弥 撮影:萩原憲治 音楽:穂口雄右 出演:山口百恵/三浦友和/中村竹弥/津島恵子/有島一郎/初井言栄/花沢徳衛/丹下キヨ子
三島由紀夫による同名小説の、四回目の映画化。今回の主役は山口百恵三浦友和のゴールデンコンビ。須崎勝彌が脚色し西河克己が監督した。
 伊勢湾の歌島に住む漁師の新治は、夕暮れの浜で夕日を見つめる少女を見かける。彼女は村一番の金持ちである宮田照吉の娘の初江で、一人息子を失った照吉が婿を取ることにしたのだ。強風で漁が休みになった日、新治は観的哨跡で初江と会い意気投合、またこの秘密の場所で会うことを約束する。嵐が吹き荒れた日、びしょ濡れになった新治と初江は観的哨跡で、たき火をはさんで裸になった。やがて噂が村中に広がり、二人の仲は引き裂かれてしまう。新治は日の出丸に乗り込み訓練を受けることになったが、そこに初江の婿となる安夫が乗り込んできた。<allcinema>

◎若き百恵は清楚で友和は精悍・純朴、絵に描いたようなカップルで言うことなし。特に何度か挿入される百恵の祈る姿にはこの人の持つ巫女的な力さえ感じた。それはそれとして、彼ら二人を囲む脇役陣が実に良い。新治の母親役の初井言栄さんは夫を亡くして二人の子供を育ててきた女の強さと理知を見せてくれたし、新治の乗る漁船の船頭役の花沢徳衛さんはいつもながらの好い味で面白く、海女の頭分の丹下キヨ子さんは男たちに堂々と伍して海で稼ぐ女の豪快さと気っぷの良さを見せてくれた。新治が敬愛する灯台守の夫婦を演じた有島一郎さんと津島恵子さんの二人は、この島には異色の凜としたインテリジェンスを感じさせた。そして、初江の父親役の中村竹弥の爽やかな頑固親父ぶりが好ましく、総じて少しも陰湿なモノを感じさせずに物語を綴り終えた演出とスタッフに拍手を送りたい。呑気呆亭