8月20日(水)「小間使いの日記」

「小間使いの日記」('63・仏)監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ジャン・クロ−ド・カリエ−ル 撮影:ロジェ・フェル− 美術:ジョルジュ・ワケビッチ 出演:ジャンヌ・モロ−/ミシェル・ピコリ/ジョルジュ・ジェレ/フランソワ−ズ・リュガ−ニ
★ ジャン・ルノワールもハリウッド時代に、ポーレット・ゴダード主演で映画化(“THE DIARY OF A CHAMBERMAID”後に「ジャン・ルノワール小間使の日記」としてWOWOWで放映)したミルボーの後期自然主義の小説を、ブニュエルにしては原作からあまり離れずに映画化。J・モローを主演にすることで、スキャンダラスな雰囲気が出ている。パリからノルマンディの片田舎の貴族に奉公に来たセレスティーユを取り巻く、色情狂の夫人、靴フェチの隠居の家族、粗野で薄気味悪い下男などの、奇矯な人物像が面白い。その閉鎖的環境で起きた、少女暴行殺人事件を契機に、彼女の内面で何かが変わっていく。疑わしいのは下男のジョゼフなのだが……。ブニュエルが、製作のシルベルマン、脚本のカリエールと初めて組んだことでも記念すべき作品。以後、この黄金トリオは数々の傑作、問題作をモノにしていくことになる。<allcinema>

◎何よりジャンヌ・モロ−がいい。彼女をめぐる人物像もそれぞれに一癖有りげで丁寧に描写されていて、彼らの言動やら服装やらしゃべり方やらを味わうことで映画を見る楽しみを満喫することが出来る。しかし、それが「少女殺人事件」という猟奇的な犯罪が起こることで一変する。モロ−もまた妙にその事件にこだわることで、前半のコケテッシュな魅力を失って重くなってしまう。この事件を挿入したのはブニュエルの趣味からなのだろうが、パリから来た小間使いの目に映った田舎貴族たちの艶笑譚として終わらせてくれれば、もっと気持ちの良い作品になったのではないだろうか。呑気呆亭