7月31日(木)「夜への長い旅路」

「夜への長い旅路」('62・米)監督:シドニ−・ルメット 原作戯曲:ユ−ジン・オニ−ル 撮影:ボリス・カウフマン 音楽:アンドレ・プレヴィン 出演:キャサリン・ヘプバーン/ジェイソン・ロバ−ヅ/ラルフ・リチャ−ドソン/ディ−ン・ストックウエル/ジ−ン・バ−
★「脚本」ではなく「原作戯曲」となっていることからわかるように、演劇の本をそのまま映画にしている。舞台は一軒の家、それもほぼひとつの部屋のみ。登場人物も数人の家族だけ。そーゆー密閉間まるだしの映画空間に轟々と愛憎が渦巻く。なんでもない会話から、この家族の隠している恐ろしい闇の世界が少しずつ浮かび上がる。サム・シェパードフラナリー・オコナーのような「アメリカの濃ゆい家族もの」が好きな人にはたまらない逸品。「秘密」の中心にいる母親役のキャサリン・ヘプバーンの演技も見事。脚本家志望者必見。<allcinema>ひつじめえめえ

◎次男の死がすべての物事の発端となったことが次第に明らかになってくるのだが、その次男の名がユージンであることは、この物語がオニ−ルの自伝的なものであることを暗示しているのだろうか。若い頃にある大学の英文科の学生たちがゼミの活動の一環としてこの作品を舞台に掛けたのを観たことがあった。素人が集まっての舞台だったのだが、演出者の才能と母親役を演じた女性が銀の矢のように舞台を見つめる者たちに向けて発する存在感に圧倒され、演劇とはこれほどのモノなのかと感じ入ったことを記憶している。以来、どんな演劇を観てもその時ほどの衝撃を舞台から受けたことがない。演劇とはやはり舞台で見るべきモノであって、この作品に出演した俳優さんたちもそれぞれ熱演なのだが、舞台をそのまま映画にしただけの演出ゆえに、映画的な感動を受けることはなかった。呑気呆亭