7月18日(金)「昼下がりの決斗」

「昼下がりの決斗」('62・米)監督・脚本:サム・ペキンパ− 脚本:N・B・スト−ンJr 撮影:ルシアン・バラ−ド 音楽:ジョ−ジ・バスマン 出演:ランドルフ・スコット/ジョエル・マクリ−/マリエット・ハ−トリ−/ロン・スタ−/R・G・ア−ムストロング/ウォ−レン・オ−ツ/L・Q・ジョ−ンズ
★カリフォルニアのゴ−ルドラッシュを背景に、採掘者たちから預かった25万ドルの金を鉱山から町へと運ぶ保安官たちと、それを強奪しようとする一味の対決を描く西部劇。これが2作目のペキンパ−監督は、老いが近づいた保安官とガンマンを、スコットとマクリ−という引退が近いふたりの老スタ−に演じさせ、人生が終焉に近づくさまを、残酷なまでに描き出した。無名時代のウォ−レン・オ−ツ、ジェ−ムズ・ドル−リ−らが出演。印象的なラスト・シ−ンも心に残る。スコットはこの作品後、映画界を引退した。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎DVDの音声特典(ペキンパ−評論家による音声解説)に、ペキンパ−がこの作品について“本作は魂の救済と孤独の描写だ”と語っていたと、一人の評論家が紹介していた。以前ペキンパ−の自伝だったかを読んだときに、ペキンパ−の弁護士であった父親が、貧しい人の弁護には報酬を受け取らなかったという記述があった。その父親の常なるモット−を、ペキンパ−はこの映画の中でマクリーに語らせている。馬を並べて歩ませながらジル(スコット)がスティ−ブ(マクリ−)を説得しようとして、“Is that all you want,Steve?”と言うのに対して、遠くに目をやりながら、スティ−ブは“All I want is to enter my house justified”と返答する。家など持たぬ流れ者の雇われ保安官のものとは思えぬ台詞だが、マクリ−という誠実さの権化のような男の口から語られることによって陳腐さを免れている。以上は、今回DVDで見直して気づいたことだが、この映画の素晴らしさはラストの決闘シ−ンにあることは言うまでもない。若きウォ−レン・オ−ツを含むハモンド兄弟三人に立ち向かう老いたるガンマン二人の決闘は、後年の早撃ちを競うそれではなく、互いに抜いた拳銃を下げて接近しながら撃ち合うという正統な形で展開される。両者とも正々堂々の振る舞いで撃鉄を確実に落としながら発砲して、ジル一人が生き残るという凄まじい決闘であった。そして瀕死のスティ−ブは駆け寄ったジルに“独りで死なせてくれ”とその手を払い、まるで“俺はあの山に還って行くんだ”とでも言うかのように背後の青い山を振り返って、巨象が斃れるようにくずおれて行くのだった。呑気呆亭