7月17日(木)「バラバ」

「バラバ」('62・米)監督:リチャ−ド・フライシャ− 原作:ペ−ル・ラ−ゲルクビスト 脚本:クリストファ−・フライ 撮影:アルド・トンティ 音楽:マリオ・ナシンベ−ネ 出演:アンソニ−・クイン/シルバ−ナ・マンガ−ノ/ア−サ−・ケネディ/ジャック・パランス/ヴィットリオ・ガスマン/ア−ネスト・ボ−グナイン
★ラウレンティス製作による、ユダヤ人の盗賊バラバの波瀾に満ちた半生を描いた歴史スペクタクル大作。スウェーデンノーベル賞作家ペール・ラーゲルクヴィストの原作で、実に内省的ムードの濃い、フライシャーの正攻かつ心理描写のダイナミズム光る傑作。
凶悪な盗賊の親玉バラバは罪人として獄中の身にあった。そんな彼はある日、罪人を一人裁く代わりにもう一人の罪人を釈放する、という年に一度のユダヤ民衆の慣習によってイエスが刑に処されたことから、幸運にも釈放されることになった。棲み家に戻ると愛人(出番は少ないが印象的なマンガーノ)は既に信仰に目覚め、彼に改心するよう諭すが、受けつけぬバラバはキリストを罵る。やがて、奴隷戦士としてかき集められ、ローマの貴族を前に闘いを強いられたバラバは、戦士の中の信徒を殺せない。そして重労働を課された鉱山で火山の大爆発(この場面の迫力も凄まじい)に遭うが、奇跡的に助かる。自分にまといつく運命の崇高な力に徐々に気づき始めるバラバだが、生来の反骨者ゆえ、“選ばれし者”という真実を認めようとしない…。
まるで「道」のザンパノを思わす、直情的な肉体派で自己本位の人物の、深い懊悩を全身で表現して、クインが見事。<allcinema>

◎ワタクシにしては珍しくこの映画は原作を先に読んだ作品であった。原作はまるで古代文書のような簡潔な筆致で「バラバ」の物語を語っている奇跡的な小説であった。映画をご覧になったら是非原作をお読みになることをお薦めする。映画はまさにスペクタクル巨編という趣で、クインの熱演にもかかわらず、“キリストを身代わりにした男”の魂の彷徨は今一感得することは出来なかった。呑気呆亭