7月19日(土)「イタリア式離婚狂想曲」

「イタリア式離婚狂想曲」('62・伊)監督・脚本:ピエトロ・ジェルミ 脚本:エンニオ・デ・コンチ−ニ/アルフレ−ド・ジャンネッティ 撮影:レオニ−ダ・バルボ−ニ 音楽:カルロ・ルスティケリ 出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ダニエラ・ロッカ/ステファニア・サンドレッリ
★法律で離婚が禁じられているカトリック教国イタリアの、社会的矛盾を痛烈に皮肉ったコメディ。シチリアの没落貴族フェルディナンド(マストロヤンニ)は、連れ添って12年になる妻に飽き飽きし、17才の従妹(サンドレッリ)と恋仲になるが、妻と死別するほか再婚の望みはない。しかし、“刑法587条 自己ノ配偶者、娘、姉、妹が不法ナル肉体関係ヲ結ブトキ、コレヲ発見シ、激昂ノ上殺害セル者ハ、3年以上7年ノ刑ニ処ス”と法律にあったことから、妻に不貞を働かせ、名誉のために殺害したことにしようと計画する…。
鉄道員」「わらの男」「刑事」の監督兼主演で知られたジェルミは本作から監督業に専念。いわゆる“名誉犯罪”と呼ばれ、讃えられさえした行為を、最も封建的な色彩の強いシチリアを舞台に、地方色豊かな人間像を生き生きと描き出した。また、遺作となった「アルフレード アルフレード」は、71年に成立した離婚法にひっかけた悲喜劇だった。62年、カンヌ国際映画祭の喜劇映画賞、米アカデミー賞オリジナル脚本賞、米ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞と主演男優賞を受賞。<allcinema>

◎冒頭、刑務所から釈放されて故郷のシチリアに着いた、死んだ魚のそれのような目をしたマストロヤンニが列車から降り立って、如何にしてカトリック宗法下で妻との離別を成功させたかという話が延々と語られる。ピエトロ・ジェルミにしては軽みのない悲喜劇で、長年連れ添った女房に飽き飽きした様がこれでもかと重ったるく語られて、マストロヤンニばかりかこっちも辟易して、かえって何の罪もないのに嫌われる女房殿に同情心を持ってしまったのだった。その女房を見限って17歳の従妹をモノにしようと画策するのだが、見ていてすこしも面白くなく、まんまと女房を不倫の廉で射殺するに至っては噴飯物と云わざるを得ない。女房役のダニエラ・ロッカはなるほどその存在感が圧倒的で鼻につくほどなのだが、ラスト・シ−ンで駆け落ちした恋人のために絵のモデルとしてポ-ズを取っている場面では、可愛い女に変身していて、こんな女を殺すとはと、マストロヤンニに憎しみさえ覚えたのだった。呑気呆亭