7月8日(火)「紅の流れ星」

「紅の流れ星」('67・日活)監督・脚本:舛田利雄 脚本:池上金男 撮影:高村倉太郎 美術:木村威夫 出演:渡哲也/浅丘ルリ子/松尾嘉代/藤竜也/杉良太郎/奥村チヨ/宍戸錠
★'58年に舛田利雄監督が石原裕次郎主演で撮った「赤い波止場」のリメイク。しかし、ラストはゴダ−ルの「勝手にしやがれ」をモデルにして大幅に改変してあり、前作の「赤い波止場」がデュビビエの「望郷」をモチ−フを借りてきていることを加えると、3本の映画のモチ−フで仕上がっていることになる。ただし、それはあくまでモチ−フだけであり、作品としてはロマンチシズムと軽さがシャ−プな映像として結実していた。加島組の組長を高速道路で射殺した五郎(渡)は、神戸の関興業に身を寄せて1年が経とうとしていた。五郎は退屈さをもてあましながらも酒と女には何不自由なく過ごしていたが、殺し屋や刑事は五郎のことを狙っていた。ある日、関と取引きしていた宝石商が行方不明になり、その婚約者だという啓子(浅丘)が訪ねてきた。五郎は啓子にひかれるものを感じるが・・・。渡哲也はベルモンドばりに、ことあるごとにルリ子に寝たいと口説き、それまでの日活スタ−にない人物像を作りあげた。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎渡と浅丘の二人が交わす台詞の軽いリズムが、これまでの日本映画にはない洒落た面白さを創り出す。むろん舛田利雄池上金男のコンビによる脚本の手柄なのだが、それも渡哲也という裕チャンでも旭でもないトッポイ性格の俳優が日活撮影所に出現したからであろう。聞くところによると日活撮影所の雰囲気は、まるで学校のように隔てのない若者たちの集まりだったという。そこから生まれた数々のスタ−は他社にはない多彩でアナ−キ−な性格群であった。「自由学校」というものがあり得るとすれば、そのころの日活撮影所にこそその奇跡的な可能性があったのではなかろうか。呑気呆亭