7月5日(土)「ワン・ツ−・スリ−」

「ワン・ツ−・スリ−」('61・米)製作・監督・脚本:ビリ−・ワイルダ− 脚本:I・A・L・ダイアモンド 撮影:ダニエル・L・ファップ 美術:アレクサンドル・トロ−ネ 音楽:アンドレ・プレビン 出演:ジェ−ムズ・キャグニ−/ホルスト・ブッフホルツ/パメラ・ティフィン/ア−リン・フランシス
★(ベルリンが壁によって東西に分割された頃)、コカ・コ−ラ社のベルリン支店長のもとに、本社社長から娘の欧州旅行の世話をしてくれと連絡が入る。しかしこの娘は行く先々で問題を起こす不良娘だったのだ・・・。ワイルダ−お得意のコメディで、アップテンポなギャグが矢つぎばやに繰り出される痛快な一編。喜劇役者としてのキャグニ−も光っている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎映画の冒頭、ブランデンブルグ門が映し出され、1961年8月13日ベルリンが東西に分割されたとのコメントがあり、その6ヶ月前・・・、と物語が始まる。ということはこの映画の製作は8月13日以降に企画され撮影されたことが分かる。まさにタイムリ−な企画で、公開がその年の内であることを考えるとよくもこれだけ質の高い作品を短時日ででっち上げたものだと感心する。クレジットを見ると戦前にワイルダ−がベルリンで見たフェレンツ・モルナ−ルという人の一幕撃を下敷きにしているとのことだが、キャグニ−の凄まじい早さで連射される台詞はダイアモンドとワイルダ−のモノに違いなく、ソビエト共産主義に象徴される教条主義を散々に笑いものにし、返す刀で実在のコカコ−ラ社に象徴される欧米資本主義の芬々たる俗臭を切り捨てるという離れ業は、まさに皮肉屋ワイルダ−の独壇場である。キャグニ−はモチロンだが、セ−タ−と菜っ葉ズボンとキャップでサイドカ−に乗ったガチガチの共産主義者から、キャグニ−の仕掛けにはまって見かけも性根も次第にご都合主義のキャピタリストに変貌してゆくブッフホルツの快演が実に面白く見応えがあった。呑気呆亭