7月9日(水)「みな殺しの霊歌」

「みな殺しの霊歌」('68・松竹)監督・脚本:加藤泰 原案:広見ただし 脚本:三村晴彦 撮影:丸山恵司 音楽:鏑木創 出演:佐藤允/倍賞千恵子/菅井きん/中原早苗/応蘭芳/角梨枝子/松村達雄
東映の時代劇や、任侠映画ばかりを手掛けてきた加藤泰が、初めて松竹に招かれて撮った、彼にしては珍しい現代劇。ある男が、5人の有閑夫人を次々と惨殺していく。なぜ男がなんら因果関係のない女たちを殺していかなければならないのか。その背後には5人によって犯されて自殺した少年の姿が浮かんでくるのだが・・・。むごい殺しを繰り返す主人公の残忍さが反転すると、心根の優しさが浮かび上がるという演出があざやかで、殺人者を演ずる佐藤允の執念の表情が見るものに迫る。殺される側の女性、菅井きん中原早苗・沢淑子・応蘭芳・川村有紀の顔ぶれも楽しい。無垢な少女・倍賞千恵子の初々しさも光る。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎これはいくらなんでもやり過ぎだよな、というのが率直な感想であった。そもそも一人の男の子を五人の女が寄ってたかって強姦するという設定そのものに無理がある、・・・って、己の胸に手を当てて考えてみればムリでしょ。ほとんど行きずりの関係でしかないクリ−ニング屋の男の子の自殺にこんなに盛り上がってしまう佐藤允演ずる島という、これも何があったか知らないが、婚礼の夜に新妻を殺してしまったという男の異常性格を全開させて、五人の女たちを犯して殺すというまったく無意味な行動に走らせる。それも可哀相に菅井きんさんだけは北海道でそんなシ−ンもなしに殺されてしまうというのは、これは作者たちのそれだけは見たくないという考え(ワタクシも同意するが!)によるのだろうが、それはアンマリというものではなかろうか。その佐藤允の相方に、兄を殺してしまって執行猶予中の娘(倍賞)を配するなどというのは、山田洋次も加わっていたという製作陣のやり過ぎというしかない。映像的には見るべきシ−ンもあったが、加藤泰にしては凡作である。呑気呆亭