7月3日(木)「ハスラ−」

「ハスラ−」('61・米)監督・脚本:ロバ−ト・ロッセン 原作:ウオルタ−・デ−ビス 脚本:シドニ−・キャロル 撮影:ジ−ン・シェフトン 音楽:ケニヨン・ホプキンス 出演:ポ−ル・ニュ−マン/ジャッキ−・グリ−ソン/パイパ−・ロ−リ−/ジョ−ジ・C・スコット
★W・デイビスの小説の映画化。ビリヤ−ドで金を稼ぐプロの“ハスラ−”の世界を描く。全編の3分の2がゲ−ム・シ−ンというビリヤ−ド・ファンにはこたえられない一編。球の動きと回転に人生のすべてを賭ける男たちをみごとに描ききった異色作である。若きハスラ−、エディが“ミネソタの名人”ファッツに勝負を挑み、前半はリ−ドするが、逆転されて文無しとなる。酒びたりのなかで献身的につくす女の愛に報いることもできずにいるが、なんとか再挑戦を申し込み、今度は勝つのだが・・・。ニュ−マンの熱気と老練グリ−スンの好演が光る。(ぴあ・CINEMA CLUB)

ミネソタ・ファッツとの初戦で勝ち続けていたエディは、ファッツが呼び寄せた金主のバ−トの“お前は負け犬だ”との言葉に動揺して自滅の道をたどる。このセリフの面白さはエディの負け犬性を即座に見抜いたバ−トは、実は歪んだ鏡に映った反転のエディであることを匂わせたところにある。バ−トにとって己の持たぬ才能を持つエディは憎悪と憧憬の対象であるゆえに、近親憎悪的な執拗さで纏わり付きその才能を叩きつぶすべくエディの商売道具である両手の親指を骨折させるに至る。しかし、その事故が契機となってエディとサラの間に愛が芽生え、再びエディの才能が復活するのを見て、バ−トは二人の間を裂くべく画策し遂にサラを死に追いやるのだが、そのサラの死がエディを覚醒させたとき、バ−トを或る意味で輝かせていた悪魔性の彩りが色あせて、エディにとってはもうバ−トはメフィストたりえぬ存在となった。エディはファッツと戦い、ファッツとの間にバ−トには手の届かぬ関係を確立したのだった。呑気呆亭