7月1日(火)「ジャンヌ・ダルク裁判」

ジャンヌ・ダルク裁判」('61・仏)監督・脚本:ロベ−ル・ブレッソン 撮影:レオンス・アンリ・ビュレル 美術:ピエ−ル・シャルボニエ 音楽:フランシス・セイリング 出演:フロランス・カレ/ジャン=クロ−ド・フルノ−/ロジェ・オ−ラ
★撮影にイル・ド・フランスのムードン城の庭、及び地下室を利用し製作された、ジャンヌ・ダルクの裁判とその焚刑にのみ焦点を絞った、ブレッソンのストイシズムに貫かれた映像が怖いくらいの作品だ。敬虔なカトリック教徒として知られる彼のジャンヌ像は、カール・ドライエル(「裁かるゝジャンヌ」)やジャック・リヴェット('94年の「ジャンヌ/愛と自由の天使」「ジャンヌ/薔薇の十字架」)のより人間的なそれより、幾分純化されすぎのきらいがある。もちろん、死の恐怖に脅える乙女の姿を描きはするが、それは地下牢の壁の割れ目から盗み見される光景としてだ。そこからジャンヌを火刑台に追いやったものに対する、ブレッソンの醒めた眼が感じられる。しかし最後、いよいよ十字架上の人となる少女がそこへ追い立てられよろめくさまを、狭い歩幅で歩く裸の足のみを追って表現する所、執行後の燃えつきた十字架、それを呆然と見つめる僧侶たち、近くを停まってはまた飛び立つ二羽の鳩を仰角で捉えるショットを積み重ねるラストの厳かさには胸をうたれる。
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◎この時代の史実について詳しくない当方としては、入り乱れる宗教的な対立を表わす裁判での尋問に付いてゆくことが出来なかった。ジャンヌを演じたフロランス・カレという女性も例によって素人を起用したのだろうが、存在感はなかなかのものではあったが、神から啓示を受けて女だてらに剣をとって英仏戦争に参戦するという、いわばファナテイックな性格を表現することは無理だったようだ。ジャンヌにそれとなく合図を送る僧侶の役割も説明不足で、言ってしまえばサッパリ判らなかったというのが正直な感想である。呑気呆亭