6月21日(土)「吹けば飛ぶよな男だが」

吹けば飛ぶよな男だが」('68・松竹)監督・脚本:山田洋次 脚本:森崎東 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演:なべおさみ/緑魔子/有島一郎/ミヤコ蝶々/犬塚弘/佐藤蛾次郎
★“寅さん”以前の初期・山田洋次の傑作のひとつ。当時、テレビの「シャボン玉ホリデ−」でクレイジ−・キャッツとともにおなじみになり、喜劇界のホ−プとして注目されたなべおさみを主演に起用し、緑魔子との異色コンビを組んでいる。大阪のチンピラ・サブ(なべ)はヤクザの幹部を夢見ている。たまたまナンパした家出娘・花子(緑)は、サブと同じく母親のいない貧しい生まれだった。ふたりは意気投合するが、花子は強姦による妊娠5ヶ月の身重であったという、ほろ苦く哀しいコメディ。有島一郎犬塚弘、石橋エ−タロ−、安田伸石井均芦屋小雁など東西のお笑い陣が顔をそろえており、小沢昭一活弁調ナレ−ションが秀逸。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎リアルタイムで見た時は花子の哀れさに泣けてしまって、この作品は記憶に残る映画として胸の引き出しの中にしまわれていたのだったが、久し振りにこの年で見直してみると、映画としては脇役陣の造形が良く出来ていて好いのだが、花子が強姦により妊娠していたという設定がいかにもありきたりで、折角のなべおさみ緑魔子の好演がラストの流産の血の無残さで台無しになってしまったように思った。蛾次郎と三人でたくましくしたたかに生きて欲しかったなァ。呑気呆亭