6月19日(水)「白昼堂々」

「白昼堂々」('67・松竹)監督・脚本:野村芳太郎 原作:結城昌治 脚本:吉田剛 撮影:川又繡 音楽:林光 出演:渥美清/倍賞千恵子/藤岡琢也/有島一郎/大貫泰子/三原葉子/生田悦子/コント55号
★九州の筑豊に実在した“泥棒村”を題材にした作品で、炭鉱が閉鎖されたため昔の稼業“スリ”を再開。仲間を集めて一大万引集団を結成し、彼らが日本全国で“成果”を上げるさまを面白おかしく描く。原作は「週刊朝日」連載の結城昌治の小説。撮影は野村芳太郎監督とは名コンビの川又繡。

◎さくら(倍賞千恵子)にこんな色っぽさが有ったのかと、認識を新たにさせられた。ちっちゃな目の渡勝(渥美)の前に登場した仇な和服姿のよし子は、そのちっちゃな目を瞠らさせるほどの妖艶さと見事なスリの技を見せる。倍賞千恵子という俳優さんは'65年の「霧の旗」でも一途なオンナの怖さを見せてくれたが、こうした喜劇でもハッとするような輝きを見せる。こんな多面的な才能に満ちた女性が、会社の都合でその最も働ける時期をほとんど「さくら」を演じることだけで過ごしてしまったことは、日本の映画界にとって不幸なことだったのではないだろうか。渥美清にしても俳人山頭火を演じたいと念じ続けていたと聞くが、その渥美の山頭火と行きずりに関わり合う旅の女に倍賞を配したら、日本人の心を揺さぶる作品が出来たのではなかろうか?山田洋次にとっても渥美清にとっても倍賞千恵子にとっても、「寅さん」は長すぎた。ギネスに乗りゃあいいってもんじゃない。ボクの持論だが「男はつらいよ」は第八作の「寅次郎恋歌」で終わるべきだった。呑気呆亭